21万トンの米はどこに消えた? 備蓄米を放出しても「適正価格に落ち着くまで2年近くかかる可能性も」

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「さんざん外務省の悪口を言っていたのに……」

【全2回(前編/後編)の前編】

 ついに放出されることになった21万トンの備蓄米。もちろん焦点は「これで価格は落ち着くのか」だが、昨年8月の「令和の米騒動」と、それに続くコメ価格の高止まりを招いたものは何だったのか。その背景をたどると、誰もが知るあの「巨大組織」に行き着く――。

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 石破茂首相の機嫌が良いらしい。きっかけは、2月7日(日本時間8日)に行われた日米首脳会談だ。

「石破さんは新聞やテレビなどで今回の会談が成功と報じられていることに大喜びしているのです」

 と、官邸関係者は言う。

「アメリカに行く前はさんざん外務省の悪口を言っていたのに、帰りの政府専用機の中では打って変わって“外務省に金メダルを”と祝杯まであげていました。また、周囲には“これで支持率は10ポイントくらい上がるだろう”と根拠のない見通しを語っていた」

「食品の値上がりとしては過去最高レベル」

 国民の生活に直結する重要な判断が下されたのは、そんな最中のことだった。2月14日、農林水産省が政府備蓄米21万トンの放出を発表したのだ。

 スーパーの棚からコメが消えた昨年8月の「令和の米騒動」。その際、大阪府の吉村洋文知事から、

「なぜ倉庫に眠らせたままにしておくのか」

 と迫られてもかたくなに認めなかった備蓄米放出を政府がようやく決断したのは、コメの店頭価格が高騰しているためだ。

「新米が出回れば、品薄は回復する」

 昨年8月、当時の坂本哲志農水相は会見でそう説明していた。しかし、新米が出回ってもコメの価格は安くならず、逆に上昇していったのだ。スーパー「アキダイ」代表取締役の秋葉弘道氏によると、

「令和の米騒動前、ウチは新潟県産コシヒカリが5キロで1980円+税でしたが、今は3680円+税になっている。1個の商品が1000円も2000円も値上がりしているわけです。こんなのは普通じゃない。食品の値上がりとしては過去最高レベルではないでしょうか」

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