「若手有望株1位」選出でも「佐々木朗希」に気になるデータ…MLB「25歳未満」日本人投手のシーズン最多勝利はわずか「4勝」だった

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最速165キロはスキーンズ超え!

 スキーンズは最速164キロの剛速球を武器に、ルーキーながらオールスターにも選出。野茂英雄氏以来となるナ・リーグの先発投手も務めた。オフには新人王に選ばれただけでなく、サイヤング賞投票でも並み居る好投手に交じって3位に食い込んでいる。

 佐々木はそんなスキーンズをも上回る最速165キロの速球の持ち主。メジャーの環境に慣れさえすれば、いきなり昨季のスキーンズを上回る投球を披露しても驚かないだろう。

 ただ、そうは言っても佐々木は、身長(192cm)はメジャーの投手としてもやや高い部類に入るが、線の細さが目立っており、スタミナには大きな懸念もある。

 1年目から二桁10勝の大台に乗せてもおかしくはないが、やはり本格化は3~4年先とみるのが妥当だろう。

 なお、過去に25歳未満でメジャー登板を果たした日本人投手は6人いる(村上雅則、マック鈴木、大家友和、多田野数人、田沢純一、大谷翔平)。この中で最も多い勝利数を記録したのは、1965年の村上氏(21歳シーズン、ジャイアンツ)と、2018年の大谷(23歳シーズン、エンゼルス)で4勝。大谷ですら23歳で迎えたメジャー1年目は故障もあって、10試合の登板で4勝止まりだった。

 大谷は二刀流という特殊な事情もあったが、それでも20代前半の投手がフル稼働で勝ち星を積み重ねるのは容易なことではない。

平成の怪物も1年目は防御率4.40

 そこで25歳シーズンに条件を緩めてみると、かなり景色が違ってくる。どちらもメジャー1年目だったダルビッシュ有(2012年、レンジャーズ)と、田中将大(2014年、ヤンキース)がそれぞれ、16勝と13勝を挙げていた。ただ、ダルビッシュは防御率が3.90、田中はシーズン途中で戦線を離脱しており、日本時代の実績を鑑みると、どちらも百点満点といえるパフォーマンスではなかった

 さらに26歳シーズンまで対象を広げると、松坂大輔(2007年、レッドソックス)が15勝を挙げている。しかし、防御率は4.40と、平成の怪物としてはかなり物足りない成績だったことが分かる。

 これまで何人もの日本を代表するエースたちが若くしてメジャーの地に辿り着いているが、野球からベースボールにアジャストするのに数年はかかっている印象だ。ただ、彼らと佐々木と間には明確な違いが一つある。それが日本時代の起用法である。

 松坂を筆頭に、ダルビッシュや田中は日本で数年にわたってエースとしてフル稼働。チームのリーグ優勝や日本一にも貢献した。一方で、佐々木は“過保護”と揶揄されるほどロッテに大事に育てられてきた。佐々木は偉大な先輩たちに比べると登板数もイニング数も極めて少ない。

 それが昨秋のポスティング後にファンの批判を招く一因にもなったが、目標がメジャーでの活躍だとすれば、ロッテでの5年間はいい助走期間になったはず。そのポテンシャルからすれば、25歳未満の日本人投手が持つ“4勝”の記録をあっさり抜き、最年少で10勝に到達してもおかしくないだろう。メジャー初先発まで約3週間。佐々木が夢に見た舞台はもう目の前だ。

八木遊(やぎ・ゆう) スポーツライター
1976年生まれ。米国で大学院を修了後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLなどの業務に携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬記事を執筆中。

デイリー新潮編集部

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