ウクライナ平和維持部隊に慎重姿勢、防衛力は弱体化…「政権交代」ドイツが向き合うべき最大の課題とは

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連立交渉は長期化か

 2月23日にドイツ総選挙が実施された。28.6%の票を得た「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」が4年ぶりに政権に復帰することが確実となったが、単独過半数に届いておらず、連立相手の獲得が不可欠な状況だ。

 反移民を掲げる「ドイツのための選択肢(AfD)」は20.8%の票を得て第2位となったが、CDU党首のメルツ氏はAfDとの連立を拒否しており、16.4%で第3位の社会民主党(SPD)と組閣に向けた交渉を開始する構えだ。

 今回の投票率は82.5%と1990年の東西ドイツ統一後で最も高く、選挙戦では移民対策や経済政策などが主な争点だった。

 メルツ氏は「できるだけ早く行動力のある政府を再構築することが重要だ。世界は待ってくれない」と述べ、早期の政権樹立に意欲を見せているが、「連立交渉が長期化する」との懸念が浮上している。

 国民の関心が最も高い移民対策でCDUとSPDの間の溝が大きいからだ。CDUはAfDに流れる保守票を取り込むために移民政策を厳格化しており、SPD内ではメルツ氏への反発が根強い。両党が歩み寄るには相当の時間を要するとみられている。

今年も景気回復の兆しは見えず

 経済対策も焦眉の急だ。2月上旬に公表された世論調査の結果は「景気低迷を懸念している」が68%、「生活費の上昇に懸念している」が70%に達しており、政治不信がこれまでになく深刻化している。

 ドイツ経済は2年連続でマイナス成長となり、今年に入ってからも景気回復の兆しが見えないが、輸出の拡大が「頼みの綱」となっている。中でも米国の輸出は好調であり、昨年の対米貿易黒字は700億ユーロ(約10兆8000億円)と過去最高となった。だが、トランプ関税が今後足かせとなるのは間違いないだろう。

 不動産バブル崩壊も気がかりだ。ドイツの昨年の商業用不動産価格は前年比5.4%下落し、4年連続のマイナスだ。

 昨年第4四半期の企業倒産件数は前年比36%増の4215件となり、2009年以降で最多を記録している。

 不景気のせいで都市財政も悪化している。ドイツ都市会議が17日に公表した調査結果によれば、低成長と社会保障支出の増大により、多くの都市財政は危機的な状況にある。昨年7月時点の合計特殊出生率は1.35と、日本と同様に少子高齢化が進んでいる。

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