尹大統領の「自主退陣論」が浮上…内戦回避の切り札となるか
「決戦の時」は3月上旬か
――「時すでに遅し」なのでしょうか?
鈴置:趙甲済氏や金大中氏、楊相勲氏らが自主退陣論を書いた2月第2週は韓国ギャラップの世論調査で弾劾賛成が57%、反対が38%。もっとも賛否が接近した時期でした。2月第3週は60%対34%と再び弾劾賛成に世論が傾いています。
野党第1党「共に民主党」の李在明代表の「やりたい放題ぶり」に、与党「国民の力」への支持が増えました。同時に弾劾反対の声も高まったのですが、ここに来て与党への支持が失速し始めたようです。
中央日報の社説「中道層が離れても弾劾反対にこだわる韓国与党」(2月18日、日本語版)はその原因として、与党が国民年金改革や医学部定員問題など緊急の課題解決に消極的なうえ、憲法裁判所の裁判官の辞任を要求するなど、中道層の意向とはかけ離れた動きに出たことを挙げています。
大統領弾劾訴追への憲法裁判所の審判は、早ければ3月上旬に下ると見られています。いずれにせよ、残り時間は少ないのです。
民主主義が苦手な韓国人
――結局、左右が激突する……。
鈴置:それが韓国という国の本質です。党派の対立を上手に管理できない。国益を大きく損ねるというのに内輪もめをやめない。韓国のことわざで言えば「泥田で闘う犬」です。
1987年に民主化し、韓国人は思ったことを言えるようになりました。しかし、40年近く経っても国民の様々な意見を調整してコンセンサスを作る仕組みを韓国は持てなかった。
昨年末の戒厳令もそうです。それを引き起こした野党の29回にも及ぶ閣僚らへの弾劾攻勢もそうです。韓国人はコンセンサス作りどころか、憲政の常道を壊すのに血道を挙げています。今後、左右が街頭で激突しても不思議ではありません。
4カ月で3度も検事総長への指揮権が発動された2020年から韓国の民主主義は壊れ始めていました。同じ頃に権威主義的な体制から脱した台湾が、着実に民主主義国家の道を歩んでいるのと対照的です。
民主化以前に韓国人から「民主主義は韓国人には無理。日本人のように妥協というものができないのです」と言われたことがあります。
当時は「いくらなんでも言い過ぎだろう」と驚いたものです。でも、今になって考えれば「韓国人は民主主義が苦手」というのはあながちウソでは無かったな、と思うのです。
半導体を作る李朝
――なぜ、台湾、あるいは日本では民主主義が定着したのに、韓国は失敗したのでしょうか?
鈴置:それを語ると長い話になります。『韓国消滅』)第2章「形だけの民主主義を誇る」をご覧いただければ幸いです。ことに第1節「『先進国』の称号欲しさから民主化」、第2節「半導体を作る李朝」、第4節「台湾の民主主義は進んだのに……」で詳しく述べています。
――「半導体を作る李朝」とは?
鈴置:国を滅ぼす激しい内部対立は今になって始まった話ではなく、李氏朝鮮からの宿痾(しゅくあ)という意味です。この本をお読みいただけば、韓国の「失敗の本質」を納得いただけると思います。
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