“やたら威勢がいい”“何かと顔合わせしたがる”だけじゃない…「下請け」が本気で頭を抱える発注元の意外な要件とは
御社には鍛えられましたよ
もちろん私にとっても彼らはカネをくれる大切な仕事相手である。できる限り要望には応えようとするのだが。途中から理不尽さを感じるようになり、「しかし……」や「でも……」などと否定をすることも出てくる。たとえば、書類の提出約束が「10日午前」だったとしよう。その前日の9日14時頃に「今日の18時から社内で緊急会議になったので、それまでに提出してもらえませんでしょうか」と一斉送信メール(ないしはSlack的なツール)で連絡が来る。
予定がないのならば対応はするが、その日の午後は別の作業用に時間を作っている。その旨を伝えると「それは困ります」と親分が返事をし、そこにかぶせるように部下が「急なお願いで申し訳ありませんが、書類がないと先に進めないので、こちら優先で作業していただけませんでしょうか」と来る。そこに親分が上記「下請け社員(仮名:田中)」の名前を挙げたうえで「田中さんはウチの会社が色々急に決めることをご存じだと思いますし、田中さんはよく対応してくれました。あなたもできるのでは?」と畳みかける。
すると田中は「いやぁ~御社には鍛えられましたよ(苦笑)」などと書き、3人の見事な連係プレイで私の締め切りを前倒しさせる方向にもっていく。ここまで行くと断るのは難しくなってくる。何しろ下請けというのは弱い。相手との関係性をギスギスさせたくないし、値切られたら困る。
ジェットストリームアタック
他にも問題はある。たとえば、アウトプットに不満がある時の指示が曖昧過ぎることだ。「もう少しエッジが効いた企画にできますか?」や「既視感がある提案なのですが……」などと、「ただただ、お前が出したものにオレは満足しない」という意思表明だけでしかない。具体的にどう直せばいいか分からない旨を伝えると、ここで再び3人のジェットストリームアタックで私を追い込んでいくのだ。それを基に修正をすると再び「田中をホメる」攻撃が来て「田中は『いやいや(苦笑)』と答える」連係プレイを見せる。
このように鉄の絆を持つ3人組というのは厄介過ぎるのである。
すでに彼らの仕事のやり方・阿吽の呼吸があるため、徹底的に新参者の4人目を無能扱いするようになるのだ。だが、その3人組の評判を社内で探ると、「大して成績は良くないのに、鉄の上下関係で、3人の方針はブレない。そのかわり、助っ人として入った人が毎度精神を病む」というリアルな評判を聞くこともある。仮に1人が自分の味方になっても、親分が味方にならない限り、こちらの負けだ。
ならば4人組だとどうにかなるのか? という疑問が出てくるが、実は、3人組よりマシである。というのも、さすがにその親分にしても他の3人を意のままに操るのは難しい。1人は反発をしてくる。4:1で攻め立てる構図はあまり起こり得ず、せいぜい3:2である。これならば理不尽な扱いは減るし、「2」になってくれた人物に対し、「〇〇さんは私の味方だ」と思うことができ、心が安らぐ。
毎度3人組が地雷というわけではないが、こうしたことは心の隅に留めておいてもいい。「なんかヘンだよな……」とモヤモヤした時に「3人組の法則」だと分かれば原因が分かり、自分は無能なのではないのだろうか……、と悩む必要がなくなる。
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