「ゼレンスキー大統領」を“独裁者”と呼び「プーチン大統領」と急接近…トランプ大統領“終戦圧力”の背景に「真の脅威である中国に専念したい」との思惑
事態は悪化する一方
「ちなみにマスク氏はオルタナ右翼と目される『ドイツのための選択肢(AfD)』の支持を公言しています。AfDは排他主義的な主張からネオナチと見なす論者もいます。トランプ大統領もマスク氏もヨーロッパの歴史や秩序に関心がないだけでなく、知識も教養も持っていません。EUのウルズラ・フォンデアライエン委員長はメルケル内閣で国防大臣などの重職を歴任してきた優秀な政治家であり、トランプ大統領のことは軽蔑しているに違いないでしょう」(前出の佐瀬氏)
政治家なら軽蔑する相手を無視することもできるが、新聞社がトランプ大統領の動向を報じないわけにもいかない。
「ヨーロッパの高級紙がヒトラーやナチスという単語を使ってトランプ大統領を報じているのは、“ヨーロッパの秩序を破壊した指導者と党”という観点だけでなく、軽蔑のニュアンスを込めるという意図もあるのではないでしょうか。トランプ大統領に対する軽蔑はフォンデアライエン委員長を筆頭に、ヨーロッパのまともな政治家なら持っている感覚だと言えます。そうした政治家の本音が、紙面に反映されているというわけです」(同・佐瀬氏)
佐瀬氏は「欧州分断は今後、深刻さを増すことはあっても、事態が好転するとは考えられません」と指摘し、「私はヨーロッパの未来に対してかなりの悲観論者です」と言う。
「オレ、お前」の友情
佐瀬氏はトランプ大統領のプーチン大統領に対する“敬称”に注視したいと言う。
「『貴殿』とか『閣下』という言葉は皆無で、『オレ、お前』的な呼びかけを使うのです。なぜトランプ大統領はウクライナを冷遇し、ロシアと停戦交渉を行っているのか、専門家は様々な分析を行っています。しかし、そうした説明は全て深読みなのかもしれません。トランプ大統領は『オレの大切な友達が苦境に陥っている。助けよう』くらいの感覚でプーチン大統領に手を差し伸べている可能性があります。とにもかくにもトランプ大統領の任期は4年間です。EUもアメリカを除くNATO加盟国も『とにかく4年間をどうやり過ごすか』という議題で協議を重ねると考えられます」(同・佐瀬氏)
註:Energized neo-Nazis feel their moment has come as Trump changes everything(ガーディアン電子版:1月26日)
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