「ゼレンスキー大統領」を“独裁者”と呼び「プーチン大統領」と急接近…トランプ大統領“終戦圧力”の背景に「真の脅威である中国に専念したい」との思惑

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 アメリカのトランプ大統領の祖父は、フレデリック・トランプ氏という。1869年3月にドイツ西部で生まれ、1885年にアメリカへ移住した。彼がワシントン州で開業したレストランが繁盛し、トランプ家は財を成した。つまりトランプ大統領はドイツ系アメリカ人という家系になるわけだ。

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 時事通信は2月20日、「『危険』『ばかげている』 トランプ氏発言に猛反発―ドイツ」との記事を配信した。トランプ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領を「独裁者」と呼び、これにドイツのショルツ首相が「全くの誤りで危険だ」と強く批判したと報じた。

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから丸3年が経過した今、トランプ大統領の“ルーツ”であるドイツだけでなく、ヨーロッパ各国の首脳はトランプ大統領に対する批判を強めている。担当記者が言う。

「トランプ大統領がヨーロッパ各国の意向を完全に無視した上で、ロシアと停戦交渉を始めようとしているためです。イギリス、フランス、ドイツといったG7加盟国だけでなく、本来なら最優先するべきである侵略被害国のウクライナさえ“蚊帳の外”に置こうとしています。この理解に苦しむ外交を正当化するためか、トランプ大統領はゼレンスキー大統領を『独裁者』、『勝つ見込みのない戦争を始めた』、『支持率は4%しかない』など、誹謗中傷レベルの暴言を連発。ヨーロッパは一丸となって批判、反論を行っています」

 トランプ大統領は“カネ”で解決する姿勢も見せて顰蹙を買っている。バイデン政権によるウクライナ支援は合計1750億ドル(約26兆円)。この支出をトランプ政権は問題視し、ウクライナに5000億ドル(約75兆円)のレアアースを“上納”するよう要求した。「これからも助けてほしいなら、カネを持ってこい」というわけだ。

過大評価が発覚したロシア軍

 だがウクライナを侵略したのはロシアだ。EUとNATOの東進は勢いを増す一方で、ウクライナの親ロ政権は2014年のユーロ・マイダン革命で打倒されてしまった。

 焦ったロシアはEUやNATO加盟国と自国の“緩衝地帯”を無理矢理に作ろうと、軍事力でウクライナを併呑(へいどん)しようとした。これがウクライナ戦争が起きた原因とされる。

 侵略戦争の被害国を「勝つ見込みのない戦争を始めた」と批判し、「助けてほしければレアアースを持ってこい」と要求するトランプ大統領の姿勢をどう受け止めるべきなのか、軍事ジャーナリストが言う。

「トランプ外交の真意を分析することは困難ですが、予想以上に“ロシア軍が弱かった”ということが影響を与えたのではないでしょうか。ウクライナ侵攻時、ロシア軍は首都キーウの陥落を狙って大軍を動員し、電撃作戦での全土占領を目論みました。ところがウクライナ軍と国民が一丸となった反撃に為す術もなく敗北を重ねたのです。ウクライナ軍も反攻作戦に失敗したとはいえ、国力の差を考えれば、ロシア軍が勝利できなかったというだけで驚くべきことでしょう。そして裏を返せば、ロシア軍はたいしたことがなかったという結論になります」

 ソ連時代、大国ロシアは東側諸国のリーダーだった。ワルシャワ条約機構軍を率いてNATO軍に対峙し、圧倒的な数の機甲師団を擁する陸軍は世界最強と目されていた。

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