「冷えた夫婦関係のままでというのも酷…」と語る52歳不倫夫 彼の価値観を変えた“2つの重大事件”とは
【前後編の前編/後編を読む】年5回の密会を続けて7年超…52歳夫が“現地妻”と決めた「もしも」の時の2週間ルール
不倫が世間から叩かれるのは、結婚したら恋愛してはいけない、結婚相手とだけ関係をもたなければいけないという倫理上の観点からはずれているからだ。もちろん、刑法には抵触していないから犯罪ではない。ただ、民事上、離婚の原因とはなり得る。そして世間の「道義上」も反発をくらう。
【後編を読む】年5回の密会を続けて7年超…52歳夫が“現地妻”と決めた「もしも」の時の2週間ルール
「とはいっても……冷えた夫婦関係のまま一生過ごせというのも酷な話ですよね」
苦笑しながらそう言うのは田之上朋宏さん(52歳・仮名=以下同)だ。どこにでもいそうな会社員だが、笑うと目尻が下がってこの上なく優しい表情になる。どこから見ても、決して悪い人には見えない上に、巧みな話術をもっている。
「大学では弁論部に入っていました。理屈をこねくり回して話すのが好きなだけです」
恥じ入るようにそう言う。
親友の突然の死…受験直前の衝撃
彼は地方の「ごく普通の家庭」に育った。父は会社員、母は塾講師だったが、ふたりとも特に教育熱心というわけでもなく、4歳違いの姉と年子の妹にはさまれた長男である彼は、甘ったれでスポーツ好きの少年だった。
「何の間違いか」中学高校を私立の難関校で過ごしたが、大学受験に失敗して2年浪人した。その2年間は彼にとって、自分自身と向き合う時間だった。
「高校時代、本当に仲のよかった親友が受験直前に自殺したんです。その前日も、僕は彼と一緒に勉強していた。といっても放課後、机を並べて勉強するようなフリをしながらふざけてばかりいたんですけどね。彼は、本当に勉強ができたから東大あたりを狙っていたんでしょう。親からのプレッシャーもかなりあったみたい。彼の父親も祖父も、そして兄も東大だったから。僕は受かったところがあればどこでも行くつもりでした。あまり大学名にこだわりはなかった」
親友は、朋宏さんといると心が安まると言った。これから本格的な受験シーズンが始まるというその日、「受からなかったらどうしよう」と不安を見せる彼に、朋宏さんは「でも人生が終わるわけじゃないよ」と笑顔を向けた。
「彼は『そうだよね』と言いつつ、『でもオレにとってはすべての終わりになるかもしれない』とつぶやいていた。そんなに深刻になるなよ、別に高卒で働いたっていいじゃんと言うと、それは許されないんだと彼はつぶやいた。あんな彼の表情は初めて見ました」
その晩、彼は家で亡くなった。受験シーズンになると登校してこない生徒も多かったが、彼は友人に会いたいがために毎日、学校へ行っていた。翌朝、少ない出席者のひとりが、「あいつ、死んだらしいぞ」と言った。まさかと思ったが、もしかしたらとも思ったと朋宏さんは言う。教師が来て、親友の死を告げた。
「動揺しないようにと教師は言ったけど、『クラスメイトが死んで、動揺しないはずがないだろうが』と教師に食ってかかってしまいました。こんなことで動揺せず、しっかり受験態勢をととのえろと言われたのが悔しかった。命より受験かよとつぶやいたら、教師も黙り込みましたが」
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