サンリオの人気キャラ「クロミ」を巡って裁判が勃発…異色キャラの“生みの親”は誰なのか?

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なぜ、生みの親の名前を偽る必要があるのでしょうか

 さらに、2023年に発売された『クロミのヒミツ』という書籍には、“クロミを作ったのはHELLO KITTYの担当デザイナーである山口裕子さんです”と記されている。山口氏といえば、低迷していたハローキティの人気を押し上げた、サンリオの歴史上重要な立役者だ。一方、そこには「スタジオコメット」の名も、「宮川知子」の名も一切登場しない。

もし、クロミの著作者がスタジオコメットであった場合、クロミのグッズに“著作・発売元 株式会社サンリオ”と表記したり、書籍に“クロミを作ったのは山口裕子氏”と記したりすることに問題はないのだろうか。

 茂垣氏もこのように訴える。

「ビジネスの観点では、生みの親の地位がないがしろにされていると思います。当社がクロミの著作者であるのに、クロミを愛する人たちの間に別の企業名が発信されていることは残念です。なぜ、生みの親の名前を偽る必要があるのでしょうか。それで何かデメリットがあるのでしょうか」

著作者の地位はどうなるのか

 今や日本のコンテンツ産業は3兆円を上回る規模と言われ、政府も輸出に力を入れ始めた。しかし、肝心のクリエイターの地位は低いままである。キャラクターの著作者人格権を巡る騒動では、滋賀県彦根市のご当地キャラクター「ひこにゃん」の事件が有名だ。近年、彦根市と作者のもへろん氏の間にあったわだかまりが解け、良好な関係を構築しつつあるが、そこに至るまで20年近い歳月を要してしまった。

 ちなみに、ウィーヴは2019年にフリューへ吸収合併され、消滅してしまった。社内にも当時のいきさつを知る人は少なくなっているとされることが、今回の問題の解決を難しくしている要因なのかもしれない。

 今回の騒動について、デイリー新潮編集部ではサンリオ側に書面で取材を申し込んだが、「現在、係争中の案件につき、詳細の回答は控えさせていただきます」「同訴訟において提出済みの主張書面及び証拠の通りです」と回答があった。なお、訴状が出されたのは2024年6月のことだが、その後、サンリオは他社と組んでクロミのオリジナルアニメを制作し、YouTubeなどで配信している。

 サンリオのホームページを開くと、社長の辻朋邦氏は創業当初からの企業理念として「『みんななかよく』の下、人と人とをつなぐことを最大の思いに掲げてまいりました」と述べている。今こそ原点に立ち返るべきだと思うが、難しいのだろうか。なお、アニメのなかでマイメロディはメロディ・タクトを使って魔法を発動させることができる。解決の糸口を見出すためには、マイメロディの助けが必要なのかもしれない。

取材、文=宮原多可志

デイリー新潮編集部

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