「費用は合計で6万円弱」「視力は左右1.2に」 作家・松田美智子が明かす「白内障」手術体験記 多焦点レンズ手術を受けた水谷豊も「近視、老眼、乱視だったがうそのように楽に」 

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蛍光灯の明かりの色にびっくり

 病室に戻った後は、ベッドで1時間ほど安静にするよう申し渡される。眼帯が出っ張っているため、横向きで寝るのが難しい。

 翌日は、左眼の手術の前に右の眼帯が外された。まず驚いたのは、蛍光灯の明かりの色がまばゆく白く、鮮明に映ったことだ。これまでは白内障の症状で、蛍光灯が温かみのある電球の色に見えていたのだと実感する。

 左目の手術も前日と同じ手順で進んだものの、2回目の手術のせいか、医師がほとんど声をかけてくれない。今はどんな段階なのか教えてほしいのだが、「今回もうまくいってます」と言われただけだった。

 両目の手術を終えた後は、3種類の点眼薬が処方された。ステロイド剤のサンベタゾン眼耳鼻科用液と、抗菌剤のモキシフロキサシン点眼液を1日4回、手術後の炎症を抑えるブロナック点眼液を1日2回点眼するよう指示される。

 3種類を2個ずつ処方されたのは、感染のリスクを減らすため、右目用と左目用に分けて点眼するからだ。また、目薬は続けて点眼してはならず、5分ほど時間を置くよう指導される。これを忠実に守ると、3種類の目薬を1回入れるのに10分かかる。正直にいって、かなり面倒くさかった。

「レンズがきちんと収まるまで約1カ月かかります。それまで、力仕事や激しい運動は避けてください」

費用は合計6万円弱

 医師に念を押されて無事退院できたものの、目に水が入るのを防ぐため、洗髪、洗顔は1週間禁止である。なので、額から汗が滴るような季節の手術はお勧めできない。汗が眼に入ると、雑菌に感染する危険がある。

 退院後は2度の検診を受けたのち、医師から、「炎症も少ないし、状態がいいので、元のクリニックに戻ってください」と言われた。

 特に指示はなかったけれど、しばらくは光に敏感でまぶしさを感じるし、防塵の意味でもサングラスはした方がいい。濃い色のレンズは瞳孔が開いてしまうので、淡い色がお勧めだ。

 白内障手術にかかる費用については、私の場合、紹介状を書いてもらうことからスタートし、さまざまな検査、入院治療を受けて再びクリニックを受診するまでで、合計6万円弱だった。

 また、これからは、度数が変化するたびに眼鏡を買い替える、という負担がなくなるのもありがたい。

 手術を終えて1カ月超が経過した現在、視力は左右とも1.2まで回復した。

 白内障手術は怖いものではないし、利点の方が多いので、安心して受けていただきたい。視界だけでなく、気分も明るくなる。

松田美智子(まつだみちこ)
作家。1949年生まれ、フィクション、ノンフィクション共に多くの作品を手がけてきた。小説に『天国のスープ』、ノンフィクション作品に『仁義なき戦い 菅原文太伝』『水谷豊 自伝』(共著)などがある。

週刊新潮 2025年2月20日号掲載

「発症率は60代で66~83%、80代で100% 1からわかる『白内障』手術体験記」より

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