「費用は合計で6万円弱」「視力は左右1.2に」 作家・松田美智子が明かす「白内障」手術体験記 多焦点レンズ手術を受けた水谷豊も「近視、老眼、乱視だったがうそのように楽に」 

ドクター新潮 ライフ

  • ブックマーク

「辛い思いがうそのように楽に」

 手術した時、彼が70歳近かったことを考えると、白内障を発症していたように思えるのだが、自覚がなかったのは、若い頃から視力に問題があり、さらに老眼が加わって、視力が落ちたと考えたからだろう。白内障は水晶体が濁ることで起きる病気なので、水晶体を除去すれば、将来的に白内障の心配はいらない、という医師の言葉は当然だ。

 彼にとっては白内障の手術ではなく、あくまで視力の回復、矯正のための手術という認識だった。

「レンズの種類は、近く、中間、遠くの3焦点(眼内レンズ)でした。現在、眼鏡は(度が入った)レンズが必要ないので、全てファッショングラスです。これは手軽にいろいろな眼鏡をかけられるので、なかなか楽しいですね」

 逆に、多焦点レンズを入れることで、不自由を感じたことはないのだろうか。

「夜間の車のヘッドライトや、街灯などは、外側に光の輪ができるのですが、それも慣れてしまったので、気にならなくなりました」

 多焦点レンズは、眼鏡がほぼ必要なくなるので理想的に思えるが、問題は、手術ができる病院が限られていることと、費用である。

「当時、3焦点レンズは両目で150万円くらいでした。高いなと思っても、近視、乱視、老眼でかなり辛い思いをしていたことが、うそのように楽になったのですから、手術をして良かったと思っています。将来的には(多焦点レンズの)需要が増えて、もっと安くなるといいですね」

恐怖の映像を想像しないように努めたが……

 さて、肝心の白内障手術だが、その前にも諸々の準備が必要だった。

 まずガチフロ点眼液0.3%という目薬を処方され、手術の1週間前から1日3回点眼するように指示される。ガチフロ点眼液は眼を殺菌、無菌化する作用があり、感染症を防ぐ。

 さらには健康観察表なるものを渡され、体温測定、咳、鼻水、喉の痛み、吐き気、下痢などの有無について1週間記録する。この観察表を提出しなければ、手術ができないという。

 年明けの1月6日、入院手続きを済ませたあと、手術前の光学的眼軸長測定、角膜形状解析などの検査を受けて、病室に入る。

 手術の2時間前になると、局所麻酔薬の点眼が始まった。30分置きに4回である。また、手術中に薬液の投与が必要になったときのために、点滴の針が留置された。

 実際の手術については、主に白内障に関する専門書を読んで知識を得ていた。

 まず白目と黒目の境目を2~3ミリ切開し、水晶体嚢と呼ばれる袋の上部を円形に切り抜く。そこから水晶体の核(中身)を超音波で砕いて吸引するという内容だ。読むだけでも怖い。

 術式は分かったものの、患者の立場からは書かれていないので、さまざまな疑問が渦巻く。麻酔をすれば、痛みはまったく感じないのだろうか。切開するときにメスは見えるのか。最後にレンズを入れるまでの一部始終を目撃することになるのか。恐怖の映像を想像しないように努めていたものの、緊張感が募ってきた。

次ページ:まばゆい光で何をされているか分からない

前へ 2 3 4 5 6 次へ

[4/6ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。