「費用は合計で6万円弱」「視力は左右1.2に」 作家・松田美智子が明かす「白内障」手術体験記 多焦点レンズ手術を受けた水谷豊も「近視、老眼、乱視だったがうそのように楽に」 

ドクター新潮 ライフ

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失明という言葉が重く響き……

 さらに2週間後、受付を済ませてすぐに、瞳孔を開く散瞳(さんどう)薬のミドリンPを点眼し、眼底3次元画像解析、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査、角膜曲率半径計測など、眼の奥をのぞく検査を受けた。

 診察室では、担当医師から「検査の結果、問題なく手術が受けられますが、両目か右目だけか、どちらにしますか」と聞かれる。

 この日までに、いずれは手術が必要になるのなら、両目をやろうと決めていた。年齢を重ねると症状が進み、水晶体が硬くなって難しい手術になると聞いていたことも理由の一つだ。

「手術中は体の力を抜いて、上を見ていてください。尿意を我慢していると血圧が上がるので、トイレは済ませておくこと。10分ほどで終わりますが、状態によってはレンズを縫い付けることになるので、時間が長くなることもあります」

 担当医の説明を聞いたあとは、DVDを見るように言われて部屋を移動。このDVDがかなり怖かった。

 白内障手術とはどんなものかの説明なのだが、手術の失敗、術後の合併症、感染症、網膜剥離、失明などの例が流れ、滅多にないとの断りがあっても、不安が残るのだ。私は両目の手術を受けるので、特に失明という言葉が重く響く。

「水谷 豊」に聞く

 手術の方法については、さほど詳しい説明はなく、超音波乳化吸引術で白内障の原因である濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入して終了、とあった。

 レンズは、保険適用の範囲なら一般的に、遠くに焦点を合わせるか、近くの手元に焦点を合わせるかで、単焦点と呼ばれる2種類のレンズから選ぶことになる。

 このレンズはアクリル樹脂で作られており、半永久的に使えるという。

 私の場合は、遠視性乱視なので、医師から、手元に焦点を合わせるレンズを選ぶと、しばらくは違和感を覚える、と聞き、遠くに合わせる単焦点レンズに決めた。そのため、老眼は残るので、読書用の眼鏡は術後も必要だ。逆に手元に焦点を合わせた場合は、外出時に遠方を見る眼鏡が必要になる。

 また、保険の適用外なら、遠方、近方の両方をクリアにする2焦点眼内レンズや、遠方、中間、近方をカバーする3焦点眼内レンズという選択肢が出てくる。

 単焦点レンズを選んだものの、これで本当にいいのか、という迷いが残っていた。そこで、多焦点レンズの手術を実際に受けた人の話を聞きたいと思い、探していたところ、経験者が見つかった。長年の知人である俳優の水谷豊(72)だ。

「手術を受けたのは3年ほど前です。僕の場合は、長い間、近視、老眼、乱視の症状が重なり、時としてどこにも焦点が合わないような気持ち悪さに襲われていました。それを治すために選択したのが、水晶体を取ってそこにレンズを入れる方法でした。白内障という認識はありませんでした。お医者さんからは、これで将来的に白内障の心配もいりませんと言われました」

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