「新入社員」も「バブル入社組」も“給与増”なのに「氷河期世代」だけがワリを喰う残酷な現実…高齢者になっても報われない“悪夢の世代間格差”とは
厚遇される20代
賃上げ自体は歓迎すべきことなのは言うまでもない。ところが氷河期世代は正社員であっても賃上げの対象から、いわば“排除”されていることが明らかになったのだ。
第一生命経済研究所の経済調査部で首席エコノミストを務める熊野英生氏は1月、「初任給アップでも世代間格差は残る~給与は増えにくい氷河期世代~」とのレポートを発表、多くの読者に衝撃を与えた。
熊野氏は厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を使い、2019年から24年にかけて20歳から59歳までの給与の増減率を計算。5歳刻みでグラフ化したのだが、このグラフのインパクトが強かった。
「最大の伸びを示したのは『20歳から24歳』の10・3%でした。現在の企業は高卒や大卒の新入社員を獲得しようと必死です。初任給がどんどん引き上げられていることは大きく報じられています。特に話題を集めたのは東京海上日動火災で、転勤と転居を伴う場合は約41万円も支払われます。『25歳から29歳』も9・5%と非常に高い伸びを示しており、企業が20代を優遇していることは明白です」(同・記者)
20代が伸び率1位と2位を独占しているのだから、「30歳から34歳まで」が5・8%で3位というのも順当なところだろう。
給与が増えたバブル世代
ところが、である。その次は「55歳から59歳」が4・9%で4位だったのだ。5位の「35歳から39歳」が4・8%なので僅差ではあるのだが、若手社員だけではなく定年が視界に入ってきた50代後半の社員も賃上げで厚遇されているのだ。
「そして唯一のマイナスとなったのが『50歳から54歳』でマイナス3・0%でした。彼らは1970年代に生まれ、まさに氷河期世代のトップランナーです。さらに『71年から74年に生まれた世代』という『団塊ジュニア世代』が含まれていることが分かります。団塊ジュニアは約800万人と推計されており、氷河期世代の何と40%を占めます。今、政治の世界で『手取りを増やす政策』が注目を集めていますが、50代前半のマイナス給与を見れば当然でしょう。しかも彼らは正社員なので、まだ恵まれているほうなのです」
40代の氷河期世代もひどい。「45歳から49歳」こそ2・1%のプラスだったが、「40歳から44歳」に至っては0・1%しか増えていない。20代の10%や9%という伸び率とは全く桁の違う“異次元の低さ”と言っていい。なぜ、氷河期世代は正社員であっても冷遇されているのだろうか。
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