「新入社員」も「バブル入社組」も“給与増”なのに「氷河期世代」だけがワリを喰う残酷な現実…高齢者になっても報われない“悪夢の世代間格差”とは
“The two most important days in your life are the day you are born and the day you find out why.”──これはアメリカの文豪、マーク・トウェインの言葉だ。彼によると人生に重要な日は二つ。うち一つは誕生日で、もう一つは「自分が産まれた理由が分かった日」という。だがネット上で「人生に悩んでいる人へ」と紹介される名言も、氷河期世代には空々しく聞こえるかもしれない。何しろ自分たちが産まれた理由が分からないほど、常に社会から“迫害”され続けているからだ。
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【写真】惨酷なまでの“世代間格差”が明らかとなった経済分析レポート。厚労省の「就職氷河期世代支援」広報キャラクターに選ばれた意外な俳優とは?
改めて「就職氷河期」と「氷河期世代」の“定義”を確認しておこう。1990年にバブル経済が崩壊し、日本経済は後に「失われた30年」と呼ばれる長い不況に突入した。結果、「1970年4月2日から1982年4月1日までに生まれた世代」は、正社員として採用されなかった学生が相当な数に達し、多くが非正規雇用を半ば強制された。担当記者が言う。
「大学4年生の内定率が急落したのは1995年組の67・1%からで、最低は2003年組の55・1%でした。大卒の何と半数が就職できない時代だったのです。就職氷河期は足かけ12年間という長いスパンで、氷河期世代の総数は2000万人と推計されています。日本の人口1億2000万人のうち16・6%を占め、最年長の70年組は今年55歳、最も若い82年組は44歳と、ベテランから中堅まで幅広い層が含まれているのが特徴です」
非正規雇用を強いられてきた氷河期世代がどれだけ苦労を重ねてきたか、ご存知の方は少なくないだろう。だが彼らの苦境は死ぬまで続くことになるかもしれない。非正規雇用で所得が低いため貯蓄が少なく、厚生年金の加入率も低いからだ。
塗炭をなめるような暮らしの中から歯を食いしばって国民年金だけは払い続けても、国は給付水準を引き下げるのではないかと疑っている人は極めて多い。
目立つ賃上げ
「氷河期世代が高齢化すると、多数の人々が生活保護の申請に殺到する」と予測する専門家は決して少なくない。
だが、氷河期世代が生活保護を受給できるかどうかは分からない。国や地方自治体が抑制策を採る可能性があるからだ。となると、彼らは就職活動で不採用に苦しめられただけでなく、老いを迎えても“生活保護氷河期”に直面させられるのかもしれない。
「ところが最近、激戦だった就職活動を経て正社員として入社した氷河期世代も不遇な待遇を受けていることが明らかになり、大きな話題になっています。具体的には賃上げの問題です。2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻し、エネルギーや小麦などの価格が急上昇しました。日本でも4月から物価が上昇を始め、10月にドル高円安になったことを決定打として経済がインフレ基調に転じます。この結果、社員の給与も変化を見せるようになりました」(同・記者)
そもそも近年の日本では人手不足が深刻化し、給与が上がりやすい状況にあった。これを強く後押ししたのがインフレだ。物価が高騰しているにもかかわらず、給与を据え置くと社員のやる気が大幅に減退してしまう。政府が賃上げを促進させる税制を導入したこともあり、大企業や有名企業ほど積極的に賃上げを行うようになった。
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