「有事の金」価格が急騰しているワケ 基軸通貨ドルの行方は? トランプ大統領が水面下で進める“秘策”

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価格は上昇の一途

 金(ゴールド)価格が急騰している。1年前は1グラム1万円前後だったが、現在の小売価格は1万5000円を超えており上昇率は50%に達した。5年ほど前は4000~5000円台だったが、2023年8月後半から1万円を超えるようになり、今年に入って最高値を更新している。一体何が起きているのか。

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 投資アナリストがこう指摘する。

「コロナウイルス感染拡大の影響で、世界情勢への不安が2020年ごろから世界中に広まりました。さらに、23年には米国のシリコンバレー銀行、シグネチャー銀行、スイスのクレディ・スイスが相次いで経営破綻したため“有事の金”として投資家の買いが急増したのです」

 そんな金は、世界経済が落ち着きを取り戻した2024年夏あたりから再び騰勢を強める。同年末にはニューヨーク金先物価格が3000ドル台を突破。伝統的に米国の金利が上昇すると金価格は下落する。なぜなら金は金利を生まないからだ。しかし、現在の状況はこの常識に反している。22年以降、米国2年債の金利が4.2%以上に上昇しているにもかかわらず金価格は上昇の一途だ。

「主にブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカなどBRICS諸国が積極的な金獲得に乗り出しているからです。これらの国々は米ドルのカウンターとしてBRICS通貨の確立を目指しており、その信用を裏打ちするため金に対する需要が高まっているのです」(前出の投資アナリスト)

 米ドルは基軸通貨として世界中で流通しており、その金融システムは簡単には崩壊しないだろう。ただ、バイデン政権末期になると大統領選に勝利するため、労働省が毎月第1金曜日に発表する雇用統計を水増ししていた疑惑が浮上した。具体的には政府系の職員やアルバイトを増やしその結果、雇用統計全体の数値を好調に見せかけたと指摘されている。経済部記者が懸念を示す。

「雇用統計は後日、下方修正を繰り返すなど信用度が疑われるようになりました。また、政府の借金増大も懸念材料です。米財務省によると、米連邦政府の2023年1月の債務残高は、法定債務上限の31兆4000億ドルに到達。現在は36兆2000億ドルで、国内総生産(GDP)の120%を超えています。米国市民1人当たりの平均債務が10万ドル、日本円にして約1500万円です。さらに、国債の利払いは国防費を超える1兆ドル(約150兆円)と信じられないレベルです。債務不履行(デフォルト)を回避するため、トランプ政権は徹底的な支出削減か、さらなる借り入れを承認しなければなりません」

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