ナショナルズ「小笠原慎之介」を待ち受ける指揮官は“熱血漢で鬼軍曹”…日本の“闘将”と似ている?

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猛抗議も名物に

「運が良かっただけ」とマルティネス監督を認めない声は今もあるが、勝因を挙げるとすれば、「時代に逆行したこと」だろう。

 当時のMLBでは、先発投手不足と負担軽減でリリーフ投手を総動員させる「ブルペンデー作戦」が持て囃された。また、経験値の少ない先発投手を早めに交代させる「オープナー作戦」も定着しつつあったが、マルティネス監督はパトリック・コービン(35)、アニバル・サンチェス(40=23年引退)らの先発投手をフル回転させた。サンチェスは前半戦途中、ハムストリングの負傷でIL入りしていただけに「無理をさせたら、また…」と、周囲は冷や汗をかきながら見ていたが、

「このチームは先発陣を中心にまわっている」

 と、マルティネス監督は持論を曲げなかった。結局、この年のワールドシリーズも制したので「マルティネス監督は正しかった」としか言えないが、翌20年からチームは「再建期」に逆戻りしてしまった。

「フリーエージェントとなった多くの主力選手が出て行ってしまったこと、イニング数の多い投手が長期離脱してしまったことなどが原因です」(前出・同)

 21年5月のカブス戦で味方野手が守備妨害とジャッジされ、ベンチを飛び出した。一塁塁審に猛抗議し、退場を告げられても怒りが収まらず、一塁ベースを引っこ抜いたこともあった。また、23年6月のアストロズ戦では9回裏の守備中、味方捕手の一塁への送球が打者走者のヘルメットに直撃。ボールが転がっていく間に二塁走者がホームインし、サヨナラ負けを喫した。マルティネス監督は猛抗議を始めたが、スタンドのファンは「またか?」と失笑。“激情家の本領”が発揮されたのは、その後だった。

 監督室に集まった野球メディアを前に“大演説”を始めたのだ。打者走者が一塁に向かって走っている写真を出し、

「見てみろ。彼はライン上にいるか? そうは思わない。彼ら(審判団)はルールを修正しないといけない。修正してくれよ! 我々は正しい判定がされなかったせいで負けたんだ! ひどいぞ!」

 と、まくし立てた。その怒りを露わにした様子は米スポーツ専門局「FOX Sports」のインスタグラムでも公開された。

 そんな激情家の指揮官のもとで小笠原は野球をすることになる。いまのところ、マルティネス監督が対戦チームのトリッキーな走塁に嵌められ、怒りでゴミ箱を蹴飛ばしたり、試合前のライス摂取を禁じたりするなどの行為は伝えられていない。しかし、「顔を見せるだけでグラウンドに緊張感を与える点」では立浪和義元監督(55)に近いものがある。強い闘争心でチームを鼓舞し、自らが先頭に立って牽引していくスタイルは、往年の星野仙一氏にも似ている。小笠原は折に触れ、古巣・中日を思い出すのではないだろうか。

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