少年少女が鉄パイプで、無抵抗のカップルをめった打ちに…1988年「名古屋アベック殺人」が少年法論議を沸騰させた理由

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よくも車を壊したな

 犯人たちはA男さんたちをはさむように2台の車を止めた。

 A男さんは逃げようとしたが、佐竹の車にぶつかってしまう。車を傷つけられたことで彼らはいっそう逆上する。鉄パイプや木刀を手にした6人が、窓ガラスを叩き、A男さんを引きずり出した。以下、4万5000字に及ぶ冒頭陳述から犯行状況を再現してみる。

〈犬丸は「金を出せ」と言いながら、右手に持った木刀でA男の頭部を力一杯殴打した。藤原、中原、佐竹、筒見は犬丸に加勢し、「よくも車を壊したな」「金はいくらある。金を出せ」などと因縁を付けて金員を要求しながら、こもごも所携の鉄パイプ・木刀等でA男の全身をめった打ちに殴打した〉

〈その後筒見は、A男車両の助手席に乗車していたB子に対して「降りろ」と怒鳴り付けた。横寺もA男車両に近付き、B子に対してシンナーを入れたビニール袋でその頭部を殴打した。袋が破れシンナーがB子の頭にかかった。すると「シンナーが無くなったがや」などと因縁を付けて、横寺はB子の髪の毛を強く引っ張り、A男車両から引き出した。さらに横寺はB子の髪の毛をつかんだままハイヒールを履いた足で、B子の足部、背部腹部などを多数回にわたり蹴り付けた。筒見と犬丸は、それぞれ所携の木刀でこもごもB子の両腕部や背部等を殴り付けた〉

 暴行はさらに続く。途中、B子さんを近くの丘陵に連れて行き、無抵抗な彼女に次々と乱暴。再び駐車場に戻り、リンチを続けた。A男さんは殴られる度に左右に倒れたり、手をついたりした。B子さんは放心状態であった。

殺害方法を相談

 犯人たちは現金1万円とB子さんのネックレスなどを奪う。午前6時、人目を避けて2人を別々に車に乗せ、ドライブインに向かった。7時半頃ドライブインに着くと、藤原らはサンドイッチを食べながら2人の殺害について相談している。

〈藤原は「顔を見られている。警察にばれて捕まるかもしれない。男は怪我もひどいしやっちゃおう。刺したり、頭を殴ったりすれば、血が出て汚れるし、血の出たものを触りたくない。やるときは、首を絞めよう。組(中原の属していた暴力団)の墓の前で首を絞めて殺し、その場に埋めよう。墓の中から骨が出てきても、だれもおかしいと思わない。女はどこかに売り飛ばそう。その前にキャッシュカードで、金を引き出せないか。もしこれが出来なければ、女も帰す訳にはいかんから、やるしかない。早いことしないと駄目だ」と車中で考えたことを話した。これを聞いた中原、佐竹、横寺、筒見も「やっちゃおう」「警察に捕まるのは嫌だ。ちょっとやりすぎた。やるしか方法がない」などと言って、藤原の提案に賛成した。その上で、中原は「殺すんなら生コン詰めにして港に沈めたらいいんじゃない」と提案。これに対して藤原は、「そんなことをしても死体が浮かんでくる」と反対した〉

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 この後、6名は被害者の2人を殺害する。【後編】では、被害者の最後の言葉と、それを無視した残虐極まりない殺害場面、そして加害者たちの「その後」を詳述する。

 関連記事「『名古屋アベック殺人』主犯少年のいま、無期懲役の身に置かれて」では、藤原和彦の獄中での様子が記されている。

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