ネット炎上の主役が「素人」から「有名人」に回帰した理由…なぜネット炎上はいまだに“テレビが起点”なのか
著名人の「ネット炎上」への無理解
続いての大型炎上案件は、動画が一般的になりつつあった2007年に発生した。吉野家の店員が「メガ牛丼」にかけて「テラ豚丼」というとんでもない巨大丼を賄いとして作ったのだ。また、2010年、おせち料理が本来の広告写真と異なり、重箱の中身がスカスカで、さらに「6Pチーズ」が入っていたことから炎上した「スカスカおせち騒動」も一般人が対象のものである。
2013年から2010年代後半まで多発したのが「バカッター騒動」「バイトテロ」である。2013年夏、高知県のコンビニオーナーの高校生の息子がアイスケースに入っている写真を投稿して大炎上。その後次々と「パトカーの天井に乗っかって暴れる男」「ハンバーガーチェーンのバンズの上で寝そべる店員」「店で出す生のソーセージを口にくわえる店員」「コンビニのおでんを『熱い!』と言いながら盗み、タバコを床に落としまくる店員」など逸材が次々と登場。一体なんのために愚行をツイッターに投稿するのか意味不明だったが、その後「醤油ペロペロ小僧」なども含め、数々の炎上一般人を輩出するに至ったのである。
ネット炎上はテレビが起点
しかし2025年現在、ネット炎上の主役は著名人に移っていった。恐らく一般人は様々な愚行や問題発言をネットに公開することが炎上を誘発し、人生を狂わせることを理解したのだろう。だが、著名人は自身の行いがネット炎上に発展し、そして引退・謹慎に追い込まれることを一般人ほど理解していなかったのでは。ここ数年間の著名人による炎上騒動を私はそう読み解いた。
何しろネット炎上については、今や「テレビが起点」なのだ。中居正広氏に関する件についても、中居氏がテレビ界の著名人だったことに加え、テレビでフジテレビの謝罪会見を見た人々が恫喝するかのような記者(彼らも著名人の一種)を炎上させたことも同じだ。そして、私はテレビの影響力のすさまじさを心から残念がるネット業界の人間であることを最後に付け加えておく。テレビの力は結局、私が本を書いた2009年当時から全く衰えていないのだ。
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