エリザベス女王の夫「フィリップ殿下」の「大喪の礼」参列はなぜ物議を醸したのか…戦争の傷跡を超えて紡がれ続ける皇室と英国王室の絆

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エジンバラ公の参列をめぐって訴訟沙汰も

 皇室と英国王室の関係からすれば、意外というか、いささか“非礼”の誹りを免れないと思えるのだが、ロンドン在住の邦人ジャーナリストはこう断言する。

「エジンバラ公がレセプションに出なかったのは、故意にそうしたのですよ。日程は前もってわかっているわけですから、わざわざ遅れて日本に到着する理由もない。あれは、英国の一般大衆の世論を代弁しているんですよ。昭和天皇に対する弔意をあまり示さないようにという配慮があった」

 英国内では先の大戦で日本軍と戦った在郷軍人会を中心に、大喪の礼参列に反対する動きがあることはわが国でも報じられていた。しかし、“世論”の圧力は想像以上に強いという。

「エジンバラ公が参列することをめぐって、訴訟沙汰にすらなってるんです。戦争経験のある男性が参列差止めと、参列の法的根拠を示せ、とロンドンの高等裁判所に訴え出た。また、ハウ外相もエジンバラ公が日本に行くと発表した後で、『殿下が出席するのは我々がヒロヒトを許したのでも、忘れたのでもなく、日本が重要なパートナになっているからだ』と弁明したほどです。高級紙はともかく大衆紙の日本批判は痛烈です。英国王室で誰一人参列を希望しなかったとか、“悪魔のヒロヒト”といった表現が使われています」(現地特派員の話)

会釈についてバッキンガム宮殿が異例の声明

 国民全部が参列に反対というわけではないが、英国民の関心はエジンバラ公が柩の前で頭を下げるかどうかにあったようである。大衆紙「サン」(2月25日付)では、

「エジンバラ公は、昨日、邪悪ヒロヒトに対してそっけない別れのお辞儀をした。敬意に満ちた礼を要する伝統に背いたものだ。エジンバラ公は柩の前で頭を持ち上げて立ち、叩頭を拒むことで、天皇ヒロヒトの大喪において面目を保った」

 といった具合である。さらにドアマンがタクシーを呼ぶときにでもしそうな種類の仕草だったと強調している。

「実はあの会釈について、バッキンガム宮殿が異例の声明を出したんです。『あれは単なる儀式であり、日本の慣例として霊前ではああするのだ。決して、悲しいという気持を表したものではない』と声明を出さざるを得ないほど、旧軍人を中心とした反日世論が盛り上っているわけです」(前出の邦人ジャーナリスト)

 慣例からすると、エリザベス女王は葬儀に出席することはなく、エジンバラ公が代りを務める。その点からすると英王室が“軽視”したわけではなく、むしろ、チャールズ皇太子より格は上だとみなされている。

 ただ、一挙手一投足が環視(かんし)されていたのでは、ロイヤルレセプションにも出席出来ないだろうし、参列した代償として大喪の翌日に横浜の英国人墓地を訪れる必要もあったのだろう。

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