「孤独のグルメ」が韓国の食文化を変えた!? 日本食ブームで「とんかつ店」が急増中
尹大統領がきっかけ
韓国国内の日本食ブームも「孤独のグルメ」の影響と無関係ではない。韓国では2006年に約5000店だった日本食専門店が2022年には4倍の約2万2000店にまで増加。さらに、ここ1、2年でさらに数を増やしている。ソウルの繁華街である新村(シンチョン)や弘大(ホンデ)、江南(カンナム)を歩いていると日本風の飲食店がやたら目につく。
うどん、しゃぶしゃぶ、オムライス、ラーメン、天丼、居酒屋……なんでもある。中でもひときわ目立つのがとんかつの店だ。例えば新村ロータリーから韓国の名門私立大・延世大へ向かう通りを進んでいくと、とんかつを提供する飲食店が約10メートル間隔で4軒もあり、その過熱ぶりが分かるというもの。ちなみに日本の大手外食の「グリーンハウスフーズ」(東京・西新宿)は2001年、韓国・ソウルに主力の「とんかつ新宿さぼてん」1号店をオープン。以来、韓国では27店舗を展開するなどすっかり韓国人の味覚に定着している。
ただ、「とんかつ」は韓国で「トンカス」と発音されており、日本とは見た目や味付けがかなり異なる。
「日本の“とんかつ”は豚肉が分厚くソースをお好みでかけて辛子で味を調整します。また大量のキャベツが添えられているのも特徴。一方、韓国の“トンカス”は豚肉をかなりたたいて薄くしたうえで揚げているため面積が広く、たっぷり目のソースはデミグラスぽい味わいです。ナイフとフォークを使って切り刻みながら食べるのでステーキのような感覚ですね。この似て非なる独特の味わいに、違和感を覚える日本人はけっこう多いのではないでしょうか」(前出のジャーナリスト)
とはいえ、日本の大手中華料理チェーン店で提供される中華丼や天津丼は中国ではまったく見かけない日本オリジナルの中華だ。そう考えると、“トンカス”も韓国オリジナルの料理として定着しているといえるだろう。
そもそも、韓国における日本食ブームを加速させたのは、2022年に就任した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(64)が進めた対日関係改善の結果でもある。観光で日本を訪れる韓国人が増加し、日本のおいしい料理を味わって、多くの韓国人が和食ファンになった。そんな尹大統領も「孤独のグルメ」の熱心な視聴者であることを明かしていたが、内乱容疑で捜査当局に逮捕され今は拘置所暮らし。独房で“孤独のグルメ”生活を送っている状態は何とも皮肉な結果ではある。