「夫婦は中国政府のスパイといううわさが」 コロナ給付金詐欺で逮捕の中国人元外交官 日本が「スパイの巣窟」と呼ばれる理由とは

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“ここはそういう店だよ”

【全2回(前編/後編)の後編】

 コロナ禍のどさくさで給付金をだまし取る。発覚が後を絶たない詐欺事件で今回逮捕されたのは、異色の経歴を持つ中国人男性だった。中国大使館の元外交官でありながら、政財界の要人が通う高級中華料理店を経営するこの男。さらに、妻は“華僑の四大美女”と呼ばれ、自身も高級中華料理店を経営。捜査当局が注目する、夫妻の“ウラの顔”とは――。

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 前編【「妻はチャイナドレスの似合う超絶美女」 コロナ給付金詐欺で逮捕の中国人元外交官 捜査機関が問題視する“ウラの顔”とは】では、逮捕された中国人男性とその妻が捜査機関から問題視されている理由について報じた。

 改めて事件の概要について振り返ろう。

 今月5日、国からのコロナ給付金をだまし取ったとして、警視庁公安部は中華料理店「御膳房」など8店舗を経営する「東湖」(東京・六本木)社長で、中国籍の徐耀華容疑者(62)を詐欺容疑で逮捕した。彼の部下で経理担当だった小島敬太容疑者(28)も同じ容疑で逮捕された。

 夫は元中国大使館員で、妻は日本の政界にパイプを持つ。この二人が営む店は、日本政界と中国政府の接点で、工作活動の拠点になっているのでは……。捜査当局が疑いの目を向けても不思議でない。

「周囲を欺くためか、すでに離婚したという話も聞いていますが、偽装離婚ではという指摘もある」(徐容疑者を知る在日華僑)

 改めて、中国経済や企業に詳しいジャーナリストで、千葉大学客員教授の高口康太氏に聞くと、

「初めて徐容疑者らの営む六本木の店に連れていかれた際、在日中国人の方に、“ここはそういう店だよ”と言われた記憶があります。在日華僑の間でも、昔から“あそこの店は怪しい”との声はよく聞きました。夫婦そろって日本でのビジネスに成功したねたみもあったと思いますが、華僑たちから“徐夫婦はスパイでは”という類いの話を聞いたことはあります」

「『秘密警察』の拠点が秋葉原のビルに」

 事実、韓国・ソウルで中華料理店を営む華僑のオーナーが、店を中国政府の「秘密警察」の拠点にしていたと疑惑を持たれて摘発を受けた。「秘密警察」とは中国の出先機関の一つで、主に反体制派の華僑を取り締まり、本国へ送還する役割を担う。

 今回の詐欺事件を彷彿とさせる展開だが、高口氏はこうも話す。

「日本でも、中国の『秘密警察』の拠点が、都内・秋葉原の一角のビルにあったとして話題になりました。このケースでも、秘密拠点を運営していたのは日本でのビジネスに成功した華僑で、中国政府から頼まれ、断り切れずにやってしまったそうです」

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