「ヘルペス感染者の認知症発症リスクは2.6倍」 アルツハイマー認知症の原因「ヘルペスウイルス説」を検証
「ヘルペスに感染している人は認知症になるリスクが……」
一般的にアルツハイマー認知症は、アミロイドβが蓄積して老人斑ができ、それが引き金になってタウたんぱくが凝集し、神経細胞を死に至らしめるといわれている。もしそれが逆であるなら、アミロイドβを標的にした薬の開発は変更を迫られるだろう。
さらに2018年、ヘルペスウイルスが原因であるという仮説を実証する衝撃的な疫学研究が台湾で発表された。
「台湾は04年からカルテの電子化を進めてきて、各国民の病歴がICチップを埋め込んだ受診カードを経由して中央のサーバーに収集され、そこで管理されます。だから疫学調査が非常にやりやすいのです。この電子カルテから50歳以上の健康保険加入者3万3448人を10年間にわたって追跡し、認知症発症のリスクを調査しました。それによると、ヘルペスに感染している人は、感染していない人に比べて、認知症になる割合がハザード比で2.56倍になっていたのです」
ハザード比とは、一定期間内に起こるイベント(病気や死亡など)の発生率を対照群と比較する統計用語で、数字が1より大きければ病気などを発症する確率が高いことを示す。
「感染を繰り返しながら脳に侵入」
台湾だけではない。スウェーデンでも、単純ヘルペスの感染者と非感染者を11年以上追跡したら、感染していた人は非感染者の1.96倍もアルツハイマー認知症を発症していたのだ。フランスでは14年間追跡したが、やはり感染者は非感染者の2.55倍も発症していたという。
「ヘルペスウイルスはほとんどの人が若年で感染します。例えば、新生児のときに大人が顔を近づけてキスしたりするとうつるわけですね。下半身に感染するヘルペスもありますが、特に上半身に感染するヘルペスは顔から侵入して三叉神経節(眼球の奥にある顔面を支配する脳神経)に潜伏します。その後、再活性化して他の部位に感染を繰り返しながら脳に侵入して認知症を発症させるのです」
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