BEGINが生んだ“世界で最も簡単な弾き語りができる楽器”や新音楽ジャンル『マルシャ ショーラ』とは? 明石家さんまの“無茶ぶり”も懐古
記録と記憶で読み解く 未来へつなぐ平成・昭和ポップス BEGIN(全3回の第3回)
この連載では、昭和から平成にかけて、たくさんの名曲を生み出してきたアーティストにインタビューを敢行。令和の今、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービス(サブスク)で注目されている人気曲をランキング化し、各曲にまつわるエピソードを深掘りすることで、より幅広いリスナーにアーティストの魅力を伝えていく。
今回フィーチャーするBEGINは、比嘉栄昇、島袋優、上地等からなる3人組で、今年デビュー35周年を迎える。前回のインタビューでは、盟友・福山雅治との関係や、『ビギンの島唄』シリーズのヒット曲について語ってもらった。最終回となる今回は、BEGINが開発した楽器『一五一会』や、新たに生み出した音楽ジャンル『マルシャ ショーラ』について詳しく伺う。
人気曲「笑顔のまんま」は明石家さんまの要望により、わずか十数時間で完成
その前に、テレビの露出から全国的に人気となった近年のヒット曲について触れてみたい。
まず、Spotify再生回数第5位の「笑顔のまんま」。本作は、2008年に明石家さんまが総合司会を務めたフジテレビの特別番組『FNS27時間テレビ!! みんな笑顔のひょうきん夢列島!!』のエンディングテーマを、さんまの無茶ぶりでその放送時間内に完成させた楽曲が元となっている。その翌年、BEGIN with アホナスターズ名義でシングルとしてリリースされ、コーラスに間寛平、村上ショージ、ジミー大西、雨上がり決死隊、ガレッジセール、タカアンドトシらが参加し、思わず笑顔があふれるナンバーとなった。
島袋「さんまさんは、番組を始める前からずっとBEGINのファンでいてくださって、その後『27時間テレビ』の夜中の生放送に呼んでもらった時に、“エンディングで歌う曲も作ってくれ”と言われたんです。僕らもなんだかノリで、“やります”って言っちゃったんですよね(笑)」
歌詞が、さんまとの共作になっているのは、“生きているだけでまるもうけ”などさんまの日常の言葉やポリシーが入っているからだそう。
比嘉「でも、ちょっと遊びに行こうかな、くらいの気分で行ったら、そこから十数時間で1曲完成させることになって大変でした(笑)」
その後、BEGINのライブにノーギャラで出演したさんまも懐が深いし、計算ではなく、偶発的な出来事からもこうして記憶に残るヒットを生み出すBEGINもすごい。
また、第7位には、俳優の桐谷健太が浦島太郎名義で発表した「海の声」のセルフカバー版がランクイン。本作は’15年、auのCM『三太郎』シリーズにて、浦島太郎役の桐谷が三線を弾きながら海に向かって恋心を歌う姿が大きな反響を呼び、当時100万ダウンロードを突破。同年にBEGINはセルフカバーしている。
島袋「CMの絵コンテを見せてもらうと、桐谷さんが三線を弾いていて、“うわ~、沖縄の三線がここまで来たんだ!”って感動したんですよ! それで、他の2人はアルバムのレコーディングでスタジオにこもっていたので、別の仕事がてら宮古島に行っていた自分が作曲することになって。“桐谷さんが歌うとどんな感じになるんだろう”って5日間くらいずっと考えていて、結局〆切の朝になってデモ音源を渡しました」
本作は、歌唱を作曲者の島袋優が担当しているのも聴きどころだろう。
島袋「BEGIN名義なのに、“なんだ、あんたかい!”ってファンの方に言われたら嫌だなあと思って断っていたら、栄昇が“これは自分で歌ってみて。そのほうが、ひと味効いたライブになってくるし、絶対に優が歌ったほうがいい”と勧めてくれて。それでも迷っていたら、ある時、ミュージックバーでイーグルスのビデオが流れてきたんです。それを見て、彼らはほぼ全員リード・ボーカルができるし、自分も頑張ってみたい、って思えたんですよ」
島袋が歌った「海の声」も晴れて10万ダウンロードを記録し、今ではライブの定番曲となっている。
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