「あの連中は、山岳アジトで12人を殺している」…「あさま山荘事件」の容疑者が長野県警の取り調べに打ち明けた“総括”という言葉の衝撃

国内 社会

  • ブックマーク

目を覆う現場

 男性8人、女性4人、計12人の遺体発掘は3月7日から13日まで、群馬県西北部にある6か所の山林内で行われた。遺体はどれも1メートルほど掘られた地中に衣服を着ない状態で埋められていた。発掘した遺体を全て水できれいにふき取り、あらかじめ呼んでいた遺族に身元を確認してもらう。

「むごい死に方で辛かったと思うが、せめてもの救いは加害者にならなかったこと」

 ある被害者の父親のつぶやきに、捜査員たちも言葉を失った。

 12人の犠牲者のうち「死刑判決」を受けた2人の遺体はアイスピックによる突き傷が無数にあり、絞殺を示す頸部の傷があった。他の10人は胃に内容物がなく、殴打による内臓破裂や肋骨の骨折があった。

〈総括の対象となった者の指名は森(恒夫)・永田(洋子)の最高幹部二人が選定し、C・C(注・赤軍中央委員)に図って決めていた。森は総括の目的について、「銃による殲滅戦は『共産主義化』された兵士によってのみ勝ち取ることができるのであって、共産化されていない者は総括によって共産化した兵士に生まれ変わる必要がある。そのことのできない者は組織より排除すべきであり、敵である権力機関に通報させないために死に追いやることもやむを得ない」との理由づけをしていた〉(同)

 ネックレスや指輪、化粧品を持っており、ブルジョア性が抜けていない。男に媚を売り、物欲が強い。総括を命ぜられている最中に男とキスをした。警察に逮捕されたとき、完全黙秘しなかった。自動車を運転中によく事故を起こす。勝手に妻をアジトに連れてきた――総括にかけられた理由である。

 顔や腹部を殴ったり蹴ったりすることに始まり、足に帽を挟んで逆エビ状態に縛り上げる。先に総括された仲間を見て、妻の名前を叫びながら舌をかんだ者もいた。食事も与えられず、極寒の山林に放置された。北原氏の著書には、犠牲者たちの最後の言葉がいくつか紹介されている。

「総括しろって畜生。手が痛い。手を切ってくれ。C・Cだって総括しろ」

「ウー、ウー、縄をゆるめて。おなかが痛い。水が欲しい。お母さーん」

「ジャンケンポンよ、アイコでしょ(うわ言)」

「畜生、苦しい。水をくれ。俺は狂人になったのだ。オーオー」

 あさま山荘事件で逮捕された5人のうち、冒頭で紹介した母親の呼び掛けに無言で応じた坂東国男だけが、1975年におきた日本赤軍によるマレーシア・クアラルンプールの米大使館占拠事件で超法規的措置で釈放、現在も警察庁および国際手配中である。

【第1回「ライフルに耐えるよう「防御盾」を徹夜で補強…「連合赤軍あさま山荘事件」に動員された警察官の「テレビに映らない戦い」」史上空前の救出作戦となった攻防戦の知られざる舞台裏を紹介】

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。