良くも悪くも個性が強すぎる? 度重なる「怠慢プレー」に「職場放棄」まで…監督に造反した“お騒がせ助っ人”列伝

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 今年も3Aでトリプルスリーを達成したトレイ・キャベッジ(巨人)、最速157キロ右腕のジョン・デュプランティエ(阪神)ら、多くの新外国人が来日し、シーズンでの働きぶりが注目されている。その一方で、過去には監督に造反し、悪い意味で注目を集めた助っ人たちも存在した。【久保田龍雄/ライター】

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繰り返された怠慢プレー

 ベンチのサインを無視するなど、身勝手な行動が目に余り、監督が指揮権を放棄する事件にまで発展したのが、阪急の内野手、バンプ・ウィリスである。

 1983年に来日したバンプは、ドジャース時代に6年連続盗塁王に輝いたモーリス・ウィルスの息子で、自身もレンジャーズ時代の78年にシーズン52盗塁を記録した現役バリバリの大リーガーだった。

 父が阪急のキャンプで臨時コーチを務めた縁から、年俸1億円の4年契約(推定)で入団も、1年目から怠慢プレーを連発し、「日本のゲームは長過ぎる。集中力が持続できない」と言い訳した。同年は打率.272、12本塁打、20盗塁(盗塁死12)とお世辞にも1億円プレーヤーとは言い難い成績に終わる。

 さらに翌84年の春季キャンプでも無断早退し、激怒した上田利治監督が「バンプは要らん」と解雇を主張したが、4年契約の2年目でもあり、フロントが間に入って丸く収めた。

 だが、シーズン開幕後もバンプの素行は改まらない。5月9日の日本ハム戦では、2点を追う8回1死一塁、カウント2-0からベンチの「待て」のサインを無視して、二ゴロ併殺に倒れた。「2-0から“ウェイト”のサインが出ることは、アメリカではあり得ない」という身勝手な理由からだった。「そんな考えじゃ使えん」と上田監督が通告すると、バンプも「オレも出たくない」と言い返し、ベンチであわや掴み合いの騒動になった。

 翌10日、バンプの2軍落ちが決まった直後、フロントが白紙に戻すと、上田監督は胃痛を理由に同日の日本ハム戦を臨時休養。明らかにバンプ問題がこじれた末の“指揮権放棄”だった。

 バンプが謝罪する形で事態は収拾したかに見えたが、夏場に“無気力病”が再発したバンプは8月4、5日のロッテ戦で2試合続けて怠慢プレーを演じ、同7日の練習でも「暑いから」と外野の全員ランニングを拒否。ついに我慢も限界に達した上田監督は「ナインに悪影響を及ぼす」として、バンプを残り40試合に出場させないことを決めた。

 登録抹消されたバンプはその後、ウエスタンの試合に出場していたが、チームが日本シリーズ出場を決めたにもかかわらず、干されたまま退団帰国となった。

「モチベーションが上がらない」と代打出場を拒否

 登録抹消で揉めたバンプとは逆に、1軍昇格を拒否してクビになったのが、阪神のヤンハービス・ソラーテである。

 メジャー通算75本塁打の長打力を買われ、2019年7月に入団したソラーテは、同26日の巨人戦でいきなり決勝2ラン、同30日の中日戦でも劇的な逆転サヨナラ弾を放つなど、“セクシータイム”のキャッチフレーズも定着。得点力不足に悩む打線の救世主と期待されたが、8月以降は一転打率.149と低迷し、同19日に登録抹消となった。

 だが、2軍では出場7試合で打率.360、1本塁打と格の違いを見せ、クライマックス・シリーズ進出のかかった終盤戦の打線のキーマンとして再び1軍からお呼びがかかる。

 ところが、再登録が予定されていた9月6日の広島戦の試合前、ソラーテは矢野耀大監督に「モチベーションが上がらない」と訴え、1軍昇格を拒否すると、職場放棄して大阪に帰ってしまった。本人は先発出場できると思っていたのに、最初の2試合は代打でベンチスタートと知り、プライドを傷つけられたのが原因とみられる。

 球団側はこの言動を「(責任は)重い。こんなことをしたら、チームが成り立たない」(谷本修球団本部長)と問題視し、同9日に解雇した。

 ソラーテは帰国後の2020年1月、ブレーブスとマイナー契約を結ぶも、8月に自由契約となり、その後はメキシカンリーグでプレーしている。

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