HEY!たくちゃん、「鬼そば藤谷」を秋田に移転“芸人としての劣等感”克服…亡き佐野実さんに導かれ

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秋田・東京・被災地キッチンカー計画

 心の中の佐野さんに後押しされるようにして始める、秋田の店。前出のニューヨーク計画の際に浮上したキッチンカーは、秋田で生かそうとしている。

「キッチンカーを複数台造って、一台は東京に持っていこうかと考えています。これから秋田で人を採用したら、『東京で働いてみたい。住んでみたい』という若者もいると思うんです。そこで彼らのために東京で寮を借りて、まず秋田で修行してもらったあと、東京でキッチンカーで働いてもらう。東京での仕事と生活を体験してもらったあとら、また秋田で頑張ってもらう。3ヶ月交代ぐらいを考えています。家賃が高騰していても、キッチンカーなら支店を出せます」

 キッチンカーを選ぶのは、単なる経費節減ではない、さらに深い理由もある。

「震災に水害と、日本は毎年のように自然災害が起き、家を失う方がいらっしゃいます。キッチンカーがあれば、速やかに被災された方々のところに向かい、温かいラーメンや食事を提供することができます。それに今どき、スマホがないと連絡も情報収集も、暇つぶしもできません。たくさんの人がスマホの充電をできるように、バッテリーも充実させる予定です」

 店名に「鬼」をつけながら、たくちゃんの思いと行動は「仏」寄りになっている。そんなたくちゃんは最近、映画「男はつらいよ」のある場面を思い出し、自分に重ね合わせて考えているという。

「満男が寅さんに『人間は何のために生きてんのかなぁ』と聞き、寅さんが『生まれてきてよかったな、と思うことが何べんかあるじゃない。そのために人間生きてるんじゃないのか』と答えるシーンがあるじゃないですか。僕はこれから秋田で店をやって、農作業をやっているおじいさんに『ありがとう』と言ってもらえたら、その時に『生まれてきてよかったな』と思えると思うんです。そういう喜びを得られる人生にしたい」

 こうした思いの裏には、やはりあの人がいる。

「いつか、あの世で佐野さんにお会いする時に、『お前、頑張ったな』って言ってもらいたんです」その時、ラーメンの鬼は、きっと笑顔で迎えてくれるだろう。

華川富士也(かがわ・ふじや)
ライター、構成作家、フォトグラファー。記録屋。1970年生まれ。長く勤めた新聞社を退社し1年間子育てに専念。現在はフリーで活動。アイドル、洋楽、邦楽、建築、旅、町ネタ、昭和ネタなどを得意とする。過去にはシリーズ累計200万部以上売れた大ヒット書籍に立ち上げから関わりライターも務めた。

デイリー新潮編集部

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