アニメにNHK大河、話題の香港アクション映画まで…すごすぎる作曲家「川井憲次」の意外な素顔「普段は音楽のことを考えてないです(笑)」
普段は音楽のことを考えていない
名作揃いのディスコグラフィは、名監督たちとの信頼関係を積み重ねた結果でもある。さらに川井氏の音楽がファンを魅了するポイントは、音楽的な引き出しの多さだ。常日頃からメロディやアイデアを考えているのでは……と想像してしまうが、川井氏は笑顔で否定する。
「普段は音楽のことを考えてないです(笑)。『歩いてるときにメロディがふっと浮かんだ』というような方もいらっしゃいますが、僕はそれがなくて。仕事場であるスタジオに入って、その映像を見ながら『さあ作ろうかな』という感じです。車の中では自分のiPhoneが車とリンクして鳴ってくれるので、自分で作ったプレイリストを聞いています。
プレイリストは割と古い曲が多いですね。シカゴやアース・ウィンド・アンド・ファイアーとか、でも特にバート・バカラックが好きなので、『失われた地平線(ロスト・ホライゾン)』とかも聞いてます。あとは好きな日本のアーティスト。山下達郎さんや松任谷由実さん、尾崎亜美さんといった、あの世代の大御所の方ですね。それからparis matchさん。ミズノマリさんというボーカルの方が好きで。そしてプレイリストではないのですが、東京大衆歌謡楽団のライブとか観に行きます。昭和の最初のほうの歌謡曲を歌っていて、結構ぐっときますよ。ファンクラブ入ってますもん(笑)」
自分の曲を何度も聞かない理由
プライベートで好む曲には「歌モノ」が多いものの、「自分で歌モノを作ることはめったにない」と笑う。では、自身の作品でお気に入りは?
「ヒットしたとかではないんですが、実は『風人物語』というアニメーションの音楽が気に入ってるんです。CDの曲順を決めなきゃいけなかった時、そのころに作った音楽を何回もリピートして聞いてたんですね。そこで『あ、これ穏やかでいいな』と初めて気がついたというか。作ってる時はわからなかったんです(笑)」
とはいえ、「自分で自分の曲を『いい曲です』と言えないタイプ」のため、「風人物語」も「ただ自分の中で気に入ってるだけ」と言い添える。また、自身の作品を積極的に聞き返すタイプでもない。
「(制作中に)マスタリングが終わった時とか、音のチェックで聞くことはありますけど、(制作後は)そんなに聞かないですね。なんというか……聞いたところでその作品が変わるわけではないので。聞くと直したくなっちゃうんですよね。盤になったらもう直しようがないので、後悔しかないんです(笑)。『こうすりゃよかった、ああすりゃよかった』『なんでこんなことやっちゃったんだろう』って」
「もっといいものを作りたい」という純粋な思いは、川井氏の音楽が人々を感動させ続ける理由の1つなのかもしれない。
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第1回【音楽を手掛けた“香港アクション大作”が大ヒット! 巨匠「川井憲次」が「結構キツかったですね(笑)」と語る納得の理由】では、「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」での実際の作業やソイ・チェン監督からのリクエストなどについて語っている。
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