音楽を手掛けた“香港アクション大作”が大ヒット! 巨匠「川井憲次」が「結構キツかったですね(笑)」と語る納得の理由
1月17日の日本公開以来、右肩上がりの興行成績が続く「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」。日本でもカルト的人気を誇るスラム街、九龍城砦が舞台の香港アクション大作は、公開3週間足らずで興行収入が1億円を突破した。この勢いを支えたのは、九龍城砦を超リアル再現したセットや超絶アクション、俳優陣の重厚な演技など、ハイクオリティなプロの仕事だ。それらが結集した約2時間は、観客がまばたきを忘れるほどである。
日本からも2人の「ケンジ」が「この人でなくては!」な存在感を放っている。アクション監督の谷垣健治氏と、作曲家の川井憲次氏だ。谷垣氏、ソイ・チェン監督に続くインタビュー第3弾は川井氏が登場。多数の名作アニメやドラマ、映画などで音楽を手がけ、「天才」とも呼ばれる作曲家は、このアクション大作といかに向き合ったのか。
(全2回の第1回)
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【写真】「トワイライト・ウォリアーズ」を支えたもう1人の「ケンジ」とは?
香港映画への入口
川井氏のディスコグラフィに並ぶ名作の数々。アニメを筆頭に映画やドラマ、ゲームなど、タイトルだけでも知っている作品が1つはあるだろう。そこに香港映画が加わるとは、川井氏自身も意外だったという。
「もともと昔、ジャッキー・チェンさんの作品など香港映画をよく見ていて、面白い世界観だなとは思っていました。もちろん、カンフーも含めて。でも、まさか自分が関わるようになるとは思っていなかったですね(笑)」
香港映画への入口は、中国・香港・韓国合作のツイ・ハーク監督作品「セブンソード」(2005年)。
「ベネチアで『セブンソード』のパーティがあった時、出演者のドニー・イェンさんから『会わせたい監督がいる』と言われて。それがウィルソン・イップ監督だったんですね。そのイップ監督と最初にやった香港映画が『かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート』(2006年)。その流れで『イップ・マン』(2008年~)シリーズをやりました」
監督のこだわりを音にする
イップ監督は、川井氏とソイ・チェン監督が初めて組んだ「リンボ」(2021年)でプロデューサーを務めた。「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」でも3人のポジションは同じだ。イップ監督と同じく、川井氏はチェン監督との相性も良かった。
「とてもやりやすい監督ですね。すごく細かなところにこだわるんですが、音楽の面に関しては結構、僕の自由にさせてくれるというか。こちらの作ったものが違う場合もちゃんと指摘してくれますが、基本的には『憲次さんに任せる』といった感じでした。もちろんリクエストはあります。『こういう印象が欲しい』『ここの音楽をもう少し長く』とか、かなり細かくこだわる点はイップ監督と同じでしたね」
「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」でも、チェン監督は日本にある川井氏のスタジオを何度か訪れ、一緒に映像を見ながら話をしたという。
「チェン監督からはまず『1950年代ぽい音楽』を求められたんですよ。でも、その頃の音楽って結構ジャズが多くて、割と明るめなんですよね。どうやったら1950年代ぽい音楽で暗くできるのかという話をしましたが、結局、特に最初のシーンはもっと暗い方がいいという話になって。そこで僕はその後にも繋がるような音楽を作り、チェン監督にOKをいただきました」
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