「石破首相は“ご破算は避けた”と言うが…」 日鉄を窮地に追いやるトランプの問題発言
曖昧なままに
政治ジャーナリストの青山和弘氏が明かす。
「石破首相に直接話を聞いたところ、“買収ではなく投資”は自分から提案したと語っていました。ただし、どこまでが“買収”でどこからが“投資”なのかは曖昧なままにして、USS株の取得割合についても“今後の話し合いだ”と。少なくとも日産とホンダの合併話のように、“ご破算になることだけは避けられた”とのことでした」
もっとも、トランプ氏の受け止め方は違った。
「トランプ氏は9日、記者団に対して、日本製鉄によるUSSの株式の取得は『過半数とはならない』と明言しました。トランプ氏がそう言い切った以上、日鉄のUSS完全子会社化の計画は変更を余儀なくされるでしょう」(前出の国際部デスク)
この点、読売新聞(2月9日付)は、〈(日本政府は買収計画の)修正案は日鉄側と事前調整した〉と報じている。だがしかし、明海大学の小谷哲男教授(国際関係論)の見方は少々異なる。
「そもそも、“買収ではなく投資”としたのは日本政府の発案であり、日鉄の同意をきちんと得ていなかったと聞いています。日本政府は日鉄と“投資”の中身も詰めていません」
事前調整は不十分だったというのだ。
“投資”という選択肢しか残されていない
経済部デスクが補足する。
「トランプ氏がUSS株の過半を日鉄は握らないと発言したことについて日鉄幹部は『関知していない』と説明しています。また、トランプ氏は会見で『来週にはニッサン(日鉄)のトップと会う予定だ。彼らが詳細を詰めるだろう』と述べていますが、当の日鉄の橋本英二CEO自身が、“聞いていない”と困惑顔だったそうです」
続けてこうも言う。
「日鉄はUSSの完全子会社化は断念せざるを得ない一方、石破氏がトランプ氏に“投資”を約束した以上、取引からの撤退の選択肢も取りづらい。事実上、日鉄には、“投資”という選択肢しか残されていません」(同)
経済ジャーナリストの町田徹氏は、
「今後、日鉄とUSSが50対50の比率で合弁会社を設立して、その合弁会社がUSSの事業を引き継ぐ形も想定されます。しかしこの場合、経営難に陥っているUSSの経営方針や企業体質が受け継がれて、経営再建が難しくなる恐れがある」
と指摘する。日米両首脳の非情な取引(ディール)が、日鉄をさらなる窮地に追いやりそうなのだ。
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