14億円の“今永資金”も追い風? DeNAがバウアー復帰に漕ぎつけた背景
女性に対する暴行疑惑でサイ・ヤング賞投手の日本球界入りが実現
そもそもバウアーはメジャーリーグでの実績から言って、日本球界入りするレベルの投手ではなかった。ところが、ドジャース時代の2021年5月、女性に対する暴行疑惑が浮上し、警察の捜査を受けた。翌2022年2月には証拠不十分で不起訴となったものの、MLB(メジャーリーグベースボール)からは同年いっぱい出場停止処分を受けた。
2023年からはメジャーのマウンドに復帰できるはずだったが、ドジャースはバウアーを自由契約に。3年契約の最終年の年俸分約2,250万ドル(約30億4,000万円)を支払いドブに捨ててまで、断固たる姿勢を見せた。MLB他球団にもバウアー獲得に手を挙げるところはなかった。
バウアーはDeNAで1年間活躍した後、再びMLB復帰を目指し、昨年はメキシコ・リーグに所属しアピールを続けていた。10勝0敗、防御率2・48で最優秀投手賞を獲得する大活躍だったが、それでもメジャーへの道は開かなかった。
「バウアー自身は一貫して暴行の事実を否定しています。しかし、米国では日本人が考える以上に、暴力や薬物のイメージに対する拒否反応が強い。バウアーもMLBへの道は完全に閉ざされたと観念したのでしょう。日本球界に骨を埋める覚悟だと思います」(在米スポーツライター)
ただ、一昨年はドジャースが年俸分を支払ったため、DeNAの支出は年俸300万ドル(約4億500万円=金額は推定、以下同)プラス出来高で済んだが、今年は単年契約で出来高を含め600万ドル(約9億3,000万円)規模に倍増している。日本の他球団からもオファーがあったという。そんな中で、DeNAが再びバウアーを獲得できたのはなぜか。
最初の入団前から球団幹部と親交があり、2軍の施設を訪れていた
「DeNAに“金満球団”のイメージは希薄ですが、球団経営は好調で、いまやゲーム主体だったDeNAグループを牽引しているほどです。さらに一昨年オフ、今永昇太投手がポスティングシステムでカブスに移籍した際の譲渡金が、最低982万5,000ドル(約14億6,000万円)に上りました。こうした懐事情が追い風になったのだと思います。また、巨人やソフトバンクのようなビッグクラブは、米国同様に暴力のイメージを気にして及び腰だった可能性もあります。ソフトバンクの孫正義オーナーは米国へ約15兆円の投資を宣言し、就任前のトランプ大統領と並んで記者会見したほどですから。また、バウアー自身、所属先が見つからなかった時に手を差し伸べてくれたDeNAに、恩義を感じていた部分があったかもしれません」(前出の民放テレビ局関係者)
「バウアーはベイスターズにずっと愛着を持ってくれていたと思いますよ。一昨年の入団も、もともと壁谷周介チーム統括副本部長と親交があり、レッズ時代の2019年に来日して2軍の施設『DOCK』を訪れていた縁がきっかけとなり実現したものです。メキシコでプレーしていた昨年も、ベイスターズが日本シリーズを制覇した際には祝福のコメントを寄せてくれました」(球団関係者)
DeNAの前途を一気に明るくしたバウアーだが、実はいまだ、沖縄・宜野湾キャンプに合流していない。それどころか、米国で独自に調整し、オープン戦期間中の3月中旬に来日する見込みだという。球団、チームメート、ファンにとっては一日千秋の思いだろう。
[2/2ページ]