ヘルパーはいるのに介護が受けられない!深刻化する「ケアマネ不足」 このままでは介護保険料が「掛け捨て」になるリスクも

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せっかくケアマネの資格をとっても

 実はケアマネージャーの数自体がそれほど少ないわけではなく、全国で約70万人にものぼる。一方で、実際にケアマネとして稼働している人数は、そのうちなんと約18万人に留まる。つまり、資格を有していながらも、50万人以上がケアマネ業務に就いていない実態があるのだ。この差は一体なぜ生じているのか。

「国は、『ケアマネの業務負担が大きいから』『職業としての魅力発信ができていないから』などという理由を述べていますが、これはひとえにケアマネの処遇という点に尽きます。ヘルパー等の介護従事者には『処遇改善加算』という手当てが国からつくようになっているのですが、ケアマネにはこれがつかない。そのため、せっかく資格をとってケアマネとして働こうとしても『現場にいたときより給料下がるんだ……』という事実に直面することになる。ただでさえ処遇の悪さが指摘される介護業界ですが、その中でもケアマネは取り残されている状態なんです」

何でも屋状態

 身体的負担も伴う現場仕事に比べたら、事務仕事が中心になるケアマネの仕事の方が魅力的だと感じる人は、少なくないようにも思えるのだが、

「介護の現場において、ケアマネは『何でも屋』状態になっています。本来は、ケアプランをつくったり、要介護者と事業所との窓口的な役割を果たすのが主な仕事のはずなのですが、要介護者に一番近い存在であるがゆえに、業務外のお手伝いを行うことが多いんです。マイナンバーや障がい者手帳の取得を手伝うのはもはやふつうのことで、ゴミ出しや救急車の同乗、ひどい場合は『電球が切れちゃった』という相談を受けて駆け付けることも……。ケアマネとしても、利用者さんを無下にすることはできませんから、『何かあったら相談してくださいね』と言わざるを得ない。国や自治体もこういう実態を把握はしているものの、ケアマネの善意に頼ってしまっている現状があります」

 近年では、資格取得のハードルを下げ、合格者を増やすなどの取り組みは進んでいる。しかしいくら有資格者が増えても、こうした処遇などが変わらない限り、抜本的な改善は見込めないというのだ。

「今稼働しているケアマネも、高齢化が進んでいます。介護福祉士などの国家資格を取得した上で実務経験を5年以上積まないとケアマネの受験資格は得られないので、そもそも10代、20代が入ってくる職場ではないんですね。だからこそ、社会における喫緊の課題だと思うのです。現場の介護従事者の処遇を改善することは言うまでもなく重要なことなのですが、ケアマネが不足したままで問題を放置していたら、『目の前でヘルパーさんは余っているのに、なぜか介護が受けられない』なんて自体が横行しかねないのです」

 そしてこう付け加える。

「ケアマネは利用者さんやご家族から頼られる、非常にやりがいのある仕事だと思います。処遇改善や業務範囲の明確化により、本来のケアマネ業務に注力することが出来るようになって、多くの方にその魅力が伝わればと思っています」

デイリー新潮編集部

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