ヘルパーはいるのに介護が受けられない!深刻化する「ケアマネ不足」 このままでは介護保険料が「掛け捨て」になるリスクも

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 介護において司令塔としての役割を果たすケアマネージャー(ケアマネ)。この人員が不足していることによって、必要な介護サービスを受けられない“介護難民”が増加している。「高齢化」「現場の介護従事者不足」ばかりが取り沙汰されている介護業界だが、問題の深淵は、「ケアマネの処遇」にこそあるのだという。

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 団塊世代が75歳以上になり、医療・介護が需要過多になると懸念される「2025年問題」。現に介護難民は増加傾向にあり、必要とする介護が受けられない人は今年、約13万人にものぼるという試算もある(2015年、日本創成会議の発表より)。

 その原因は「需要増」だけでなく「供給不足」にもあって、国は介護人材を確保するために様々な対策を講じてきた。まだまだ完全とは言えないが、ヘルパー等の処遇が改善されつつあることは、ご存じの方も多いだろう。

 しかし、その対策には大きな抜け穴があるという。

「世間では、現場で介助を行う方々の人材不足が真っ先にイメージされるかと思いますが、実は今最も深刻な問題は、ケアマネージャーの不足なんです」

 そう指摘するのは、ケアマネジメント専門会社マロー・サウンズ・カンパニー代表で、ケアマネが抱える問題について議論する厚生労働省の検討会でも参考人を務めた田中紘太氏だ。

「介護が必要な方のケアプラン(介護サービス計画書)をつくるなど、介護における司令塔役を担うケアマネがいないと、基本的に介護サービスは受けられません。つまり“上流”の部分で人手が足りていないがゆえに、待機している要介護者が多い実態があるということです」

 担当のケアマネが付かず、必要な介護が受けられないまま待機している高齢者は後を絶たないのだという。

介護保険料は“掛け捨て”に…

 田中氏によれば、不足の度合いには地域差があるようで、

「たとえば介護保険点数が高く、かつ事業者への補助金が充実している東京23区の場合、事業者が比較的好待遇でケアマネを受け入れられるため、ケアマネが足りている地域も少なくないと思います。一方で、たとえば当社が活動拠点を置くエリアの一つ、千葉県の船橋市では、『100事業所をあたってもケアマネが見つからない』『見つかるまで3か月待ち』というケースが頻繁に起こっています。あるいは東京23区の一つ、江戸川区では、区全体としてはケアマネが十分いるように見えても、葛西などの特定のエリアでは全く足りていなかったり、地域格差が大きい実態があります」

 厚労省と日本総研が実施したシミュレーションによると、「2040年には8万人超のケアマネの補充が必要になる」とされている。現状でさえ大きな問題となっているのに、その不足ぶりは加速するというのだ。

「税金と近い性質を持つ介護保険料はどんどん上がっていますが、一生懸命払い続けた方がいざ介護を必要とする時が来ても、『ケアマネがいないから介護を受けられない』なんてことが、現実味を帯びてきている。言ってしまえば、介護保険料は“掛け捨て状態”になってしまいかねないのです」

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