石破首相は「“行きたくない”と感じているようだった」日米首脳会談 「及第点」を取れた理由とは

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米メディアの記者を笑わせる場面も

 そして迎えた今月6日(日本時間7日)、妻の佳子さんと一緒に買いに行ったと思しき真新しいコートに身を包んだ石破首相はアンドルーズ空軍基地に降り立ち、ホワイトハウスの向かいにある大統領迎賓館「ブレアハウス」に入った。

「『ブレアハウス』では部屋の中でたばこを吸えたようで、緊張をほぐすのに役立ったはずです」(前出の官邸関係者)

 ホワイトハウスで行われた首脳会談はおよそ30分間。その後、岩屋毅外相やバンス副大統領らも同席しての昼食会は1時間20分。

 会談後の共同記者会見でトランプ大統領は、

「同盟国である日本の防衛のために米国の抑止力・防衛力を100%供給する」

 と明言。共同声明では、日米安保条約5条の沖縄県・尖閣諸島への適用や、中国による東シナ海での現状変更の試みに強い反対を表明するなど、日米の安保協力に関しては「満額回答」といえる内容だった。

 一方の石破首相は、2023年時点で7833億ドル(120兆円)ある対米直接投資額を1兆ドル(151兆円)まで引き上げると表明。会見終盤には、トランプ大統領が関税を引き上げた場合に報復措置を講じるかと聞かれ、

「仮定の質問には答えられない、というのが日本の定番の国会答弁だ」

 と答え、米メディアの記者が笑う場面もあった。

共同声明や会談の内容は「事前にすり合わせ」

「仮定の質問には、の部分は石破さんのアドリブだったようですが、それ以外の共同声明や会談の内容は事前に日米の事務方が入念に調整やすり合わせをしたものでした」

 と、外務省関係者は語る。

「今回の会談の準備として、今年の正月にワシントンの日本大使館に20人ほどのスタッフが集められました。今の大使館には第1次トランプ政権を経験した人はほとんど残っていない。そこで、第1次政権時代に大使館にいた外務省や経産省、警察庁などの人員が招集され、声明内容などをホワイトハウス側とすり合わせてきたのです」

 在米大使館だけではなく、日本側でも当然、周到な準備が重ねられた。

「首脳会談などの事前準備は総理勉強会と言いますが、今回であればそこでトランプという人物がどんな人間であるかをみっちりとブリーフィングします」

 そう話すのは、元駐豪大使の山上信吾氏だ。

「また、議題ごとの“発言要領”と“応答要領”を用意します。発言要領はこちらから言うべき内容をまとめたもので、応答要領は、相手の発言に対する想定問答集のようなものです。勉強会では発言要領や応答要領を外務省の担当局長が読み上げ、総理は気になることがあれば質問したり、修文を指示したりします」(同)

 勉強会で使用する発言要領と応答要領はA4サイズの紙に印刷したものだが、

「その大きさだと会談の場には持っていきづらい。そこで会談当日はA4の半分くらいのサイズの“発言・応答要領手持ち版”も用意して、背広の胸ポケットなどに入れられるようにしておきます」(同)

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