「1カ月で1000円以上の上がり幅」 フジの株価が“爆上がり”している理由 専門家が指摘する“最悪のシナリオ”とは
外資ファンドの思惑
手堅い事業内容に下支えされ、醸成された投資家たちの期待感。さらにそれをあおったのは、先にも触れた外資だった。
「株価が上がり始めた17日には、フジ・メディアHDの株を7%超保有する米投資運用会社、ダルトンが株主総会で議案を提出するとの報道がありました。経営刷新が現実味を帯び、投資熱が高まったと思われます」(森永氏)
前出・外資ファンド社員は同業者の思惑をこう解す。
「かねて彼らは、資産売却などを通じた経営効率化をフジ・メディアHDに求めてきました。しかし持株比率に限界があるため聞いてもらえず、同HDの経営を苦々しく眺めていた。国内投資家も経営刷新を一緒に求めてくれる可能性が高い今の状況は、彼らにとって千載一遇の好機です」
これまでダルトンは計3回、フジ・メディアHDに書簡を送付している。投資家たちをたきつけるようにその内容は声高になっていき、直近のものでは日枝久(ひえだひさし)・取締役相談役(87)を“独裁者”とまで批判した上辞任を要求しているのだ。
「彼らの“作戦”は、今のところ順調ですね。今月7日には、国内の投資運用会社、レオス・キャピタルワークスがフジ・メディアHDの株を5%超保有し、大株主になったことが報じられました。外資以外も乗ってきたことで一層、期待感は高まった状態です」(同)
最悪のシナリオ
伸び続けるフジ・メディアHDの株価にとって分岐点となりそうなのが、3月末に公表予定の第三者委員会による調査結果だ。
先の川口氏いわく、
「役員の責任を強く問うものであれば、経営改革を見込んで引き続き株価も上がっていくかもしれません。一方で、もし“フジテレビに問題はなかった”という結果であれば、今の経営陣が続投する理由になります。旧態依然とした経営が行われるとの失望から、株価は落ち込む可能性がある」
加えて森永氏は、こんな“最悪のシナリオ”もあると警鐘を鳴らす。
「ダルトンなどの外資は、どの程度本気でフジの経営改善について考えているのか未知数です。旗振り役としてあおるだけあおっておきながら、株価が上がりきったところで売り抜けてしまうことも考えられます。実際、会社の根幹であるメディア事業をどう伸ばすのかなど、改善の具体案は今のところ示していません。それでは要求通り経営陣が変わったとしても、根本から成長企業に変われはしないでしょう」
一夜の夢か、はたまたけがの功名か。フジに求められる変革は数知れない。
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