「1カ月で1000円以上の上がり幅」 フジの株価が“爆上がり”している理由 専門家が指摘する“最悪のシナリオ”とは
「投資家たちから諦観されていた」
その原因は、テレビ業界全体の苦境にあるという。
「ネットフリックスなどの配信サービスが台頭する中で、テレビ局は投資家たちに斜陽産業と見られています。資産価値に比べて株価が低迷しており、即ちPBRも低いままでした」(森永氏)
加えて、外資系ファンドの社員はこう語る。
「日本では放送事業者が外資に支配されることを防ぐため、その持株比率を20%未満にするよう放送法などで定められています。外資に多い“物言う株主”の影響から守られてきたのです」
つまりPBR1未満という“異常事態”にもかかわらず、経営が改革されるような機運が生まれづらい状態だった。
「国内投資家も、落ち目であるテレビ局にあえて強く経営改善を促すほどの気概は持ち合わせていない。いわば放置状態で、経営者にとってはぬるま湯です。株価を上げる意識が希薄で、ひいてはイノベーションが起こるはずもない。投資家たちからは半ば諦観されていたのです」(同)
かような背景から“低位安定”を続けてきたフジ・メディアHDの株価。
しかしそれが皮肉にも、今回の騒動をきっかけに一変したのだ。
経営刷新の期待感
「“今のフジテレビ上層部は一掃すべき”との世論を受けて、一気に経営刷新の期待感が高まりました。この機会に、放置されてきたPBRも1以上に“正常化”されるとみる投資家は多いでしょうね」(森永氏)
PBRが1以上に戻るとはつまり、低迷していた株価が資産価値に対応したラインまで上昇することを意味する。投資家からすればおいしい話に違いなく、買いが殺到したのもうなずける。
公認会計士の川口宏之氏はこう補足する。
「若く優秀な経営陣に代われば、会社を成長させるアグレッシブなことをやってくれるかも、と所期する人は多い。人事改革は不安要素でもありますが、現状のフジ・メディアHDにとってその程度、懸案事項とは呼べないでしょう」
株価伸長の理由はそれだけではない。
「同HDはメディア・コンテンツ事業の他に、都市開発・観光事業も手がけています。営業利益を見ると全体の半分以上が後者。メディア事業が一時的に不調でも、経営が改善されれば長期的に会社として成長できるともみられます」(同)
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