北朝鮮兵がロシア兵を殺害して“指名手配”に…「与えられない食料」、「無謀な突撃命令」、「ドローン攻撃に晒される映像が公開」という極限状態での凶行か
北朝鮮兵がロシア兵を殺害して逃亡、指名手配──。衝撃的なニュースであることは言うまでもない。ラジオ・フリー・アジア(RFA)は1996年、アメリカ議会の出資で誕生した短波ラジオ放送局だ。当初は反共的な放送で知られたが、現在はアジア各国の人権問題を精力的に報じている。そのRFAは1月22日、「Three North Koreans wanted in Kursk for killing Russian soldiers: report」との記事を公式サイトで配信した。
***
【写真】中朝国境で薪を集めていた実際の北朝鮮兵たち。“半農半軍”のような印象で、撮影者は貧弱な体型に驚いたという
翻訳すると「クルスク州でロシア兵を殺害した3人の朝鮮人を指名手配」となる。
RFAの見出しは「3人の朝鮮人」となっているが、記事の冒頭には《Three North Korean soldiers killed five Russian servicemen》と、3人の北朝鮮兵が5人のロシア軍人を殺したと明記している。担当記者が言う。
「RFAはテレグラム上に指名手配のポスターがアップされているとも伝えました。ポスターは北朝鮮兵3人の顔写真を掲載し、殺害された5人のロシア軍人を『セヴァストポリの第810独立親衛海軍歩兵旅団の兵士』と説明しています。また北朝鮮兵に関して『犯罪者は武装しており危険です』と注意を呼びかける文面も記載されていました。ただし、ポスターの画像がテレグラム上にアップされたのは事実ですが、その信憑性についてRFAは《独自に検証できていない》と説明しています」
第810独立親衛海軍歩兵旅団がクルスク州の最前線に配備され、北朝鮮軍の兵士が“援軍”として参加しているのは事実だ。そして、この第180独立親衛海軍歩兵旅団でロシア軍人と北朝鮮軍人の間で食料を巡るトラブルが起きたことも明らかになっている。
必然の殺人事件
「ウクライナ国防省情報総局(DIU)は昨年12月、クルスク州の最前線に配備された北朝鮮兵が食糧不足のため不満を訴えていると発表しました。不満の矛先は第810独立親衛海軍歩兵旅団に向けられ、トラブルを解決するため補給担当のロシア軍少将が派遣。ロシア軍の第11空挺旅団が持つ食料を北朝鮮兵に配給するよう少将が命令したことまで分かっているそうです。さらにウクライナ軍が戦死した北朝鮮兵の所持品を調べたところ、バッグに食料は全く見当たらず、品質の悪い手榴弾と粗悪な医療キットしか入っていませんでした」(同・記者)
こうした情報を総合すると、第180独立親衛海軍歩兵では食料の配給を巡って北朝鮮兵とロシア兵の間でトラブルが発生し、北朝鮮兵がロシア兵を射殺した可能性が浮上する。軍事ジャーナリストが言う。
「詳細が不明な点はありますが、やはり起こるべくして起きた殺人事件でしょう。そもそも言語が違う二カ国の軍隊を交ぜて部隊を編成することが異常なのです。複数の軍隊が同じ戦場で共同作戦を展開する時は、各軍の個別行動が鉄則です。さらに補給は各軍が自力で行うことも重要でしょう。日本の自衛隊も1992年からPKO派遣を行っていますが、必ず自分たちで兵站を構築します。どれだけ友好的な関係を築いている国であっても、自分たちの補給を全て握られているのは問題です」(同・軍事ジャーナリスト)
[1/3ページ]