令和ロマン・高比良くるまの謝罪動画が成功した一番の理由 「吉本に主導権を握らせなかったスマートさ」
ガバナンス機能不全の兆候か? 吉本芸人の中に見られる意識差とメディア格差
会社を信用していないように見えるくるまさんとは対照的に、会社としての苦悩を代弁したのはロザンのお二人である。オンラインカジノは違法ということも含め、コンプライアンス研修は「むちゃくちゃやってる」と明かし、事情聴取を受けたとされる芸人たちの認識の甘さを批判した。
しかし芸人の意識差を生んでいる事実自体が、吉本のガバナンス力が低下していることの表れとはいえないだろうか。少し前にはジャングルポケット斉藤慎二さんが女性問題で契約解除されたが、松本人志さんの裁判がくすぶっている最中のことだった。どんなに会社が女性やギャンブルとの向き合い方に注意を呼びかけたところで、自分は何とかできると思う芸人には響かないということだろう。
その「響かなさ」は、YouTubeやラジオなど、自分の言葉で発信できる場の多さにも比例するのかもしれない。例えばロザンのYouTubeのチャンネル登録者は18.7万人に対し、ジャングルポケットは斉藤さん脱退後も20万人超え。斉藤さんはTBSラジオのレギュラーも持っていた。令和ロマンに至ってはYouTube登録者数78.6万人、stand.fmで「令和ロマンのご様子」を配信している。なお、ギャンブルに通じた人気若手芸人の筆頭ともいえる霜降り明星・粗品さんは、YouTube登録者数228万人、Xのフォロワー数121万人、オールナイトニッポン金曜パーソナリティーと、ケタ外れの影響力を持っている。
オンラインカジノの疑惑がかかった芸人の中で、唯一関与を否定していると報じられたのがとろサーモンの久保田さんだ。ロザンの6期下にあたり、YouTube登録者数はコンビの公式チャンネルが12.2万人、久保田さん個人の「もう久保田が言うてるから仕方ないやん〆」は25万人。渋谷クロスFMで冠ラジオ枠も持っている。くるまさんの動画の反響を受けてか、18日に個人のXアカウントで関係者や応援してくれる人に向けて謝罪コメントを投稿。Xでは認否を明らかにしていないが、21日のラジオで現在の状況について語ると発表した。2018年に起こした上沼恵美子さんへの舌禍事件もあっただけに、会社からも沈黙を守るよう指示があったのかもしれない。ただ会社も何も発信しないことで、一部で「久保田ならやりかねない」などと言われ続けているのは、本人にとってはマイナス以外の何物でもなかっただろう。
本人がなんと言おうとも、警察から正式な発表があるまでは何も言えないし判断はできない。罪は償わなければならないし、本当に潔白な場合はきちんとフォローとサポートがあってしかるべきだ。ただ、オンラインカジノ問題におけるくるまさんの発信と世間の反応は、吉本という会社頼みでい続けるリスクの高さを、改めて全世代の芸人に突き付けたのではないか。吉本芸人という看板を背負い続けることそのものが、大きなギャンブルになっていくのかもしれない。