令和ロマン・高比良くるまの謝罪動画が成功した一番の理由 「吉本に主導権を握らせなかったスマートさ」

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謝罪動画に見る「定型」感の排除 吉本にリスクマネジメントを任せないという「損切り」の早さ

 芸能人の謝罪といえば、ブラックスーツで弁護士同伴のもと臨む記者会見、というのが定番だった。吉本興業では島田紳助さんや宮迫博之さんが、同様の対応を行っている。吉本以外の芸人でも、未成年との関係を認めた狩野英孝さんや、多目的トイレでの不倫がすっぱ抜かれた渡部建さんなど、どんなに普段おちゃらけている人でも謝罪会見のフォーマットは崩さないというのが基本だった。

 けれども、くるまさんの謝罪は今までとは違っていた。そもそも会社主導の会見ではないし、ジャケットスタイルではあるがネクタイは無く、カジュアルな雰囲気だ。ある程度原稿はあっただろうが、自分の言葉で伝えようとしているがゆえの「間」や逡巡がうかがえる。隣にいるのは弁護士ではなく相方の松井ケムリさんだが、最後まで口を開かない。何から何まで、今までの吉本芸人の謝罪スタイルとは違っていた。

 それはいわば、所属事務所である吉本興業に主導権を握らせない謝罪である。しかしその判断こそが、くるまさんの謝罪が功を奏した一番の理由ではないだろうか。

 闇営業に関する会見での社長発言や、松本人志さんのスキャンダルにまつわる後手後手の対応など、近年の吉本興業のリスクマネジメントの下手さを指摘する声は少なくない。今回の騒動に関しても、吉本興業の公式ホームページでは今もなお、芸人の活動自粛のみを伝え、事実関係は調査中という文言にとどめている。これではいたずらに臆測を呼ぶばかりだ。

 頭の良いくるまさんだからこそ、会社に任せていては状況が悪化するだけだと見切ったのではないか。要領が良いと見られているからこそ、会社が守ってくれるような見え方になってはかえって損をする。むしろ会社の色を排し、自分たちならではの言葉と姿を早く発信することが何よりも先決だと分かっていたように思うのだ。

 その背景には、大手メディアの信頼の失墜というのもあるだろう。きちんと謝罪をしても、都合良く編集されて180度違うイメージを植え付けられかねない。そんな不信感を持つ人が増えていることも、セルフプロデュース謝罪を選択する流れとなったのではないだろうか。

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