与党と財務省と野党が繰り広げる水面下の暗闘 国民民主の最適解はどこか

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維新との連携が進まない理由

 両党トップ間で合意がほぼ形成されていても、その通りに事態が進まなかったのはなぜなのか。

「石破、前原両氏ともに党内基盤が脆弱だからです。自民党としては『年収103万円の壁』の見直しを掲げる国民民主との関係も捨てられないとの考えも根強い。参院選で国民民主が勢力を伸ばすとして、その後に自公連立へ国民民主を迎え入れることを想定すれば“機嫌を損ねたくない”となるわけです。一方、維新内には前原氏が石破氏にすり寄っていく・抱き込まれていくことを是としない勢力も多い」(同)

 加えて、別の“勢力”の存在も見え隠れしている。

「財務省としてはざっくり言うと、維新の掲げる教育無償化の方が、国民民主の掲げる年収の壁突破よりお金がかからないので賛成しやすいとの考えです。まとめると石破氏は前原氏との関係をベースにぶっちぎりたいところですし、財務省としても国民民主案よりはマシなのですが、自民党の森山裕幹事長らは可能性を狭めるのはリスキーだと見て国民民主にも誠意を持って対応し続けるべきだと考えてきたようです」(同)

国民民主内の反応は

 国民民主内の反応はどうなのか。

「16日に投開票された大分市議選で国民民主の新人がトップ当選を果たしました。北九州市議選や横浜市議補選などでも議席を確保し、報道各社の世論調査でも野党第一党の立憲民主を上回ることもあり、人気を維持している印象です。そういった点を背景に、今夏の都議選や参院選で1議席でも積み上げて影響力を大きくするためには自公に妥協しない方がよいのではないかとの算段も根強くあるようです」(同)

 国会での発言を大きくするために何より大事なのは議席数。参院選が終われば、国政選挙は「しばらくない」との見方も強い。

「国民民主側の主張する年収103万円の壁の引き上げ案はかなり高いハードルだとされていますが、安易に与党に譲歩することで、参院とはいえ国会で勢力を積み上げられるチャンスをみすみす逃すことはないだろう考えですね。その結果、与党と維新がくっつけば、『教育無償化が理念と著しく乖離して政争の具に使われている』などと攻撃することもできますし」(同)

 それぞれが悩ましさを抱えつつ、といったところだろうか。

「石破氏が財務省を説得しやすい維新ととりあえずは手を組むが、国民民主とも話し合いを続ける」というシナリオの可能性が高そうだ。与党にとってベストの選択肢は存在せず、ベターを模索する状況が続くことになる。フジテレビ問題などに押されて、政治報道の存在感が薄いのは官邸にとってラッキーなことかもしれない。

デイリー新潮編集部

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