トランプ政権の「手荒な移民強制送還」にも沈黙…米国との“蜜月”をアピールしても、インド経済にリスクが生じるのはなぜか
融和ムードを演出した米印首脳
インド政府は2月17日、米国からの工業品輸入を増やす方針を明らかにした。13日にワシントンで開かれた米印首脳会談の合意を受けての対応だ。会談ではトランプ大統領が不満を抱く貿易不均衡が主要議題となった。
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トランプ氏はこれまで、インドの保護主義的な姿勢を「関税王」などと非難してきた。ロイターによれば、インドの関税率は平均約17%で米国の約3%を上回る。またインドにとって米国は最大の貿易相手国であり、2023年度の対米貿易黒字は353億ドル(約5兆4000億円)と4年間で倍増した。
米国との対立回避を優先したモディ首相は、米国から石油や天然ガス、防衛装備品の輸入を拡大するとともに、貿易協定の年内締結を目指すことにも同意した。
米印首脳は融和ムードを演出した感がある。米国側はインドの人権問題に言及しなかった。インド側も、トランプ政権がインド人不法移民を強制送還する際のやり方を問題視しなかった。インド国内では、足かせを付け続けるといったやり方に怒りの声が上がっていた。
安価な中国産がインドに流入
記者会見でモディ氏は、トランプ氏が掲げるスローガン「アメリカ合衆国を再び偉大な国にする」にちなんで「インドを再び偉大にしたい」と抱負を語り、「インドと米国が提携すれば繁栄のための巨大なパートナーシップが生まれる」と蜜月関係をアピールした。
だが、トランプ氏の復権がインド経済に望ましい結果をもたらすかどうかは疑問だ。
中国から安価な製品が大量に流入していることから、インドの1月のモノの貿易収支は230億ドル(約3兆5000億円)の赤字だった。
トランプ氏の政策がこれに追い打ちをかけている。ロイターは11日付の記事で、インド鉄鋼業界の幹部が抱く警戒感を報じた。トランプ政権が鉄鋼・アルミニウムの輸入関税を引き上げたことで、安価な中国産がインドに流入し、インド国内の中小メーカーが廃業に追い込まれるリスクが生ずるという。
トランプ氏がインドに対して「相互関税(高関税の貿易相手国に同水準の関税を課すこと)」を導入すれば、インド経済への打撃は避けられない。
通貨政策に注文が付けられる可能性もある。第1次トランプ政権時代、インドは為替操作監視国リストに追加された経緯がある。
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