群雄割拠の女子卓球で「早田ひな」が魅せた無敵の“3連覇” ブロンズをゴールドに変える「エースの強み」とは
ダークホースも参戦
「日本一」の座をかけた全日本卓球選手権が、1月21日から26日まで東京体育館で開かれた。
【写真】ブロンズからゴールドへの期待がかかる「早田ひな」のあどけなさが残る「シーズン0」時代
注目は、かつての女王や日本代表経験者が目白押しの女子シングルス。現在の世界ランキングは早田ひなが日本人トップの5位で、昨年準優勝の張本美和が6位。進境著しい大藤沙月は7位で、東京五輪混合ダブルス金メダリストの伊藤美誠が8位と続き、ほかにも全日本最年少優勝記録を持つ平野美宇、ダブルスで実績十分の長崎美柚、木原美悠など国際大会で活躍するプレイヤーが登場し、まさに群雄割拠。目が離せない激戦が続いた。
戦前の大方の予想は、日本のエース早田が本命。ただ早田は、パリ五輪で利き腕の左腕を負傷。年末の試合で復帰したもののその回復具合は未知数だった。また練習不足も懸念されていた。対抗は中国選手に何度も勝利している張本だった。前年の全日本でも決勝に進出、早田に敗れたもののその実力をいかんなく発揮した。そのとき「さらに強くなってこの舞台に帰ってきます」と決意を表明していた。
さらに、今回の闘いにはダークホースもいた。大藤沙月だ。昨年4月の時点で125位だった世界ランクを半年後には7位にまで上げるなど急成長を遂げている選手だ。平野、伊藤、張本を下して国際大会で戴冠した経験もあり、いま最も注目を集める選手の一人である。
大胆なプレイとは裏腹に
さて全日本の結果は、有力選手が順当に勝ち進み、準決勝は早田が勢いのある大藤を完封、強さと経験の豊富さを誇示した。もう一つの準決勝は、張本が伊藤を4-0で退け、わずか16歳の張本はその実力が本物であることを示した。決勝は早田-張本というファン垂涎のカードとなった。
早田の防衛か、張本のリベンジか――。
第一セット。出だしは張本が良いスタートを切ったが、早田は9連続ポイントを上げペースを握った。その後も要所を締め、危なげなく史上6人目の3連覇を達成。国内に敵がいないことを印象づけた。ケガの影響で長時間の練習ができない分、今回の全日本ではインサイドワークの工夫が光った。通常、相手のバックサイドへボールを送ることが多い場面で、あえてフォアへ送球、張本の逆をつく。相手が短いサーブを予想し、若干コートに近づいて構えているのを見逃さず、長いサーブで意表をつき先手をとる。これは怪我の功名だったかもしれない。長い練習時間が取れない分、戦術面の研究に時間を費やしたという。それを早田は独特の言い回しで表現した。
「サボテンは1ヵ月に1、2回水をあげればいい。その間に他の花を咲かせられるよう頑張っている感じでやってきました」
ケガで対応できないところは無理に触らず、重要な部分だけをピンポイントで研究し、練習を積み重ねてきたという。大胆なプレイとは裏腹に非常にクレバーな選手なのである。
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