「ウルトラマンアーク」劇場版 監督に「美しいものを撮りたい」と言わしめたユウマとシュウ、二人の進化

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言いたいことは言えたテレビシリーズはきれいに完結

 ウルトラマンアークは、はるか彼方の銀河系から来た光の使者である「ルティオン」がユウマの想像力に一体化することで実体となるが、そのルティオンの銀河での物語や戦いについては作品中で言及されなかった。ただそれ以外に作品中で描きたかったことは、テレビ全25話で描き尽くした思いが、辻本監督にあったためだ。

「『ルティオン』の銀河の物語以外の部分はきれいに完結したので、その後のユウマやシュウを描いたとしても、ちょっと蛇足になる。ならば、違う時間軸の物語を描く方がいいな、と劇場版に挑みました」(辻本監督)

 大スクリーンの劇場版にはついつい派手なアクションなどを期待するファンも多そうだが、辻本監督はそれを否定。

「劇場版だからといって、火薬の量やアクションシーンが多いとか、派手さばかりを求めてしまうのは、ウルトラマンアークという作品には違う、と思ったんです。アークの魅力は人情ものやトリッキーな展開で魅せる物語にある。そうしたアークらしさは、自分が監督していないテレビ回でも、プロデューサーやシリーズ構成の継田淳さんが貫いてくれた。 だから劇場版でもそれを貫くべきだと考えました。ですので、劇場版は延長戦というよりはご褒美的な感じ。テレビシリーズを楽しんだ人は絶対楽しめる、面白い仕掛けやアイデアを詰め込んだ作品です 」(同)

チームの雰囲気の良さがあふれる

 劇場版の撮影は、テレビシリーズの撮影終了からほぼ間を置かずに行われた。演じた二人はどうだったのだろうか。

「ほぼ地続きで撮影されたので、脚本自体は特別でも、僕ら『SKIP』(ユウマやシュウが所属するチーム)の本当の魅力や全員の光る個性をスクリーンで拝めると分かったんです。やることは本当にドラマとは変わらず、すごく面白いものを作るぞっていう気持ちが強かった」(戸塚)

「僕は逆に、テレビ本編が25話で一旦終わっているので、これから劇場版を撮るんだという気持ちで臨みました。有輝の言ったように、SKIPの雰囲気は変わらずに撮影を迎えたんですが、みんな少しテンションが上がった状態。楽しみながらすごく和気あいあいと撮影できたと感じましたね」(金田)

 二人の言葉からは、現場のチーム力が高まったことが窺える。所長役の西興一朗、ユウマの先輩調査員役の水谷果穂を含めたチームの雰囲気は「自然で、(普段の4人)そのまんまだった」と戸塚と金田がともに語るほど。また劇場版に臨む思いは表現の仕方こそ違えど表裏一体。ユウマとシュウの関係性同様に、二人の関係も醸成されたようだ。

美しいものを撮る

 劇中でも互いを理解し、信頼し、ベストパートナーとなった感もあるユウマとシュウだが、劇場版では、彼らの友情はさらに強固になる。その熱さは、ややもすれば妖しさすら感じさせるほどだ。

「最近の若者って、ホントにルックスが良くてきれいで、背も高くてスタイルも良くて。美しいですよね。そう、もはや“美しい”んです。おじさん(である自分)も美しいものは見ていたいし、美しいものを見ていると演出にも力が入ってくる。ハグする前に1度手を握ろうとか、じゃあそれを俺はちょっと“寄り”で撮るわとか。二人の雰囲気、というか、こいつらがそうさせちゃうんですよ(笑)。親密さというか、性別を超えた友情の表現みたいなね」

 辻本監督が親しみを込めて「こいつら」と呼ぶほど、スタッフをも巻き込んで現場を熱くさせていた二人だったようだ。

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