ネット記事が大量生産されるいま「ライター」は花形職業か? ベテランライターが「夢のあるオイシイ仕事ではない」と断じる理由
造花を一つ一つ作っていく
ウェブがメディアの覇権を握りつつある昨今、ネット媒体用の原稿を書く「ライター」が注目されている。元々そうした原稿の執筆者は、新聞記者や出版社の就職試験に通った編集者、何らかのツテで出版社の編集者と仕事をするようになったフリーライター、そして各メディアから依頼された専門家によるコラムに限られていた。
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だからライターに関して大っぴらな「ライター募集!」といった呼びかけは滅多になかった。ウェブ全盛の時代になり、とにかく各ウェブサイトがPVを稼ぐべく記事を量産するためにライターを公に募集するようになったのである。
その時のウリ文句は「自由な時間に働ける」「好き、を仕事にできる」「表現の仕事でお金が稼げる」などなど。実に魅力的ではないか! 要するに、花形職業の一つになったのである。そして、雨後のタケノコのように乱立するウェブメディアはライターを募集し、「採用審査」「試用期間」を経て本採用に至るようなプロセスを設けている。
一見、完全な買い手市場になっているように思える。だが、24年間ほどライターとして仕事をしてきた私からするとかなり違和感のある状況だ。正直この手のライター仕事については「内職」において取り上げられがちな「造花を一つ一つ作っていく」仕事としか思えないのだ。1文字当たりの単価が0.5~1円、なんて募集もある。
「夢のある、おいしい仕事」ではない
慣れない人なら時給400円、なんてこともあるだろう。にもかかわらず、ライターという職業自体が過度に自由でクリエイティブで将来的に有名になれるかもしれない職業扱いされている今、これらの募集に応募する人が後を絶たない。
現在ウェブニュースの需要は高まっている状況になっており、それはつまり、ウェブ上にコンテンツを増やさなくてはいけない各社が、激安価格でSEO系記事を含めた単純労働執筆作業員を求めているということだろう。
ここで、あえて言おう。ライターは決して「夢のある、おいしい仕事」ではない。ウェブ時代の今、確かに仕事はたくさんある。だが、実際には、最低賃金のバイト以下の稼ぎしかない人が大半なのではなかろうか。外出しないでいい、テキトーにネット情報をコピペして繋ぎ合わせて「いかがでしたか?」と書けばいい、といった気楽な面はあるが、いつしか虚しくなる。
結局、その業界で勝ち上がって、脚光を浴びる人間はほんの一握りなのである。採用する側は、「実績に応じたステップアップ」をチラつかせて単純作業労働者を募集しているが、同じような境遇の人間はいくらでもいる。あなたはそうしたライバルの人数を知らない。「残念ですが、今回の採用は見送ることになりました。今後、応募者様のますますの発展を祈念いたします」やら「試用期間の中でPVがそれほど伸びなかったこともあり、試用期間を延長させていただきます」みたいな連絡を送ってライターワナビーの気持ちを折るだけである。
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