公立中学が敬遠される「内申書への不信」という難問…専門家が明かす「公立中学を再生させる“たったひとつの方法”」とは
私立中のデメリット
◆私立中の受験は内申書が必要ない学校が多く、入試だけの一発勝負は非常に公正。
◆生徒の同質性が高い私立中は生徒の学力向上に有利。
◆私立中の教師は授業だけに集中できるという理想的な職場環境。
これまで私立中の様々なメリットを見てきたが、もちろんデメリットも存在するという。
「大学の進学実績を極めて重視する私立の中高一貫校は珍しくありません。そういう学校の中には東大など難関大学に合格する可能性のある生徒には手厚い指導を行い、成績が平均より下の生徒には極めて冷淡というところもあります。何しろ保護者と生徒を交えた三者面談で、『成績が悪いので家庭教師を頼んでください』と言い放つ担任教師もいるほどなのです。また、なぜか『私立中にいじめはない』というイメージが流布しているようですが、私立中にもいじめはあります。ただ表沙汰にならないよう手を尽くし、問題を起こした生徒は問答無用で退学させるからに過ぎません。さらに公立中の教師は異動でいなくなりますが、私立には何十年も勤務している“ドン”のようなベテラン教師がいる学校もあります。ワンマン社長のように権勢を振るい、学校のガバナンスに悪影響を与えていることさえあるのです」(同・親野さん)
公立中のメリット
あまりに保護者が公立中を“敵視”し、「絶対に私立中しか行かせない」と思い込んでしまうと弊害も出てくる。
「大前提として、私立の学校は国家の民主度を示すバロメーターだと私は考えています。独裁国家に私立校は存在しません。日本で私立校が多様な教育を実践しているのは何よりも素晴らしいことなのです。しかし私立を目指す中学受験が異常な過熱を示しているとなると、やはり負の側面も表面化します。本来なら公立中で伸びるタイプの子供が無理矢理に私立中へ通わされたり、保護者が偏差値だけで私立中を選び、校風の全く合わない学校で苦労したりする子供もいるのです」(同・親野さん)
私立中のデメリットも存在するように、公立中に通うメリットも存在する。
【“中学受験”過熱のウラで…わが子を「私立中に入れたい」ではなく「公立中に通わせたくない」と考える保護者が増加中 教育評論家が指摘する「公立中の課題」】
上記の記事で、親野氏は公立中の教師が授業で苦労する理由として、「生徒間で学力差が激しく、授業の内容に不満を持つ生徒が必ず生じる」点を指摘した。
しかしながら、これを別の視点から見直してみると、公立中のクラスには“多様性”が存在するとも考えられる。
「知人の弁護士は法律事務所を経営しているのですが、採用した新人弁護士が数か月も経たないうちに『辞めたい』と申し出たことがあったそうです。その新人弁護士は有名な中高一貫校から難関大学に進み、司法試験も難なくクリアした筋金入りの秀才。親も親戚も友人も全員が高学歴というタイプでした」(同・親野さん)
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