“中学受験”過熱のウラで…わが子を「私立中に入れたい」ではなく「公立中に通わせたくない」と考える保護者が増加中 教育評論家が指摘する「公立中の課題」
2月1日、首都圏で中学受験がピークを迎えた。受験者数は5万人や6万人などと報じられ(註1、2)、複数の専門家は「少子化でも高止まり」と分析している。80年代は3万人台だったという新聞記事も残っており、中学受験が“加熱”しているのは間違いないだろう。最近では、芸能人が中学受験のエピソードを披露することも珍しくない。(全2回の第1回)。
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【写真】慶應中等部に“渋幕”出身者まで…錚々たる名門中学校に通っていた芸能人たち
“加熱”の傾向が強まったことで、入試の難易度も80年代とは比較にならないほど上昇している。多くの受験生と保護者は「この私立中に行きたい!」と第1志望を明確にすることで苦しい受験勉強を耐えている――。
ところが保護者の中には、「公立の中学だけは絶対に行かせたくない」との考えから子供を私立中学の受験に誘導するケースも少なくないという。なぜ、一部の保護者は公立中を嫌うのだろうか。
中学受験の実情に詳しいライターは、「中学受験を専門にする塾講師や家庭教師は『私立中学校の入試に積極的な小学生』には大きく分けて3つのタイプがあると口を揃えます」と言う。
「1つ目は宗教の問題です。例えば一家全員がキリスト教徒だった場合、その家のお子さんはキリスト教系の私立中に進むケースが多いでしょう。2つ目は保護者の家が代々、特定の私立中に進学している場合です。関東なら早稲田、慶應、明治、立教。関西なら同志社、立命館といった私立大学の付属中に進学する小学生の中には、祖父も父親も同じ中学校に通ったということは珍しくありません。3つ目はギフテッド(天才児)など、特別な配慮が必要なケースです。中受の情報サイトの中にはギフテッドや発達障害の子供に理解のある私立中の一覧を掲載しているところもあります」
公立中批判は2006年から
ここまでなら誰もが納得だろう。だが「特定の私立中に行きたい」という子供ではなく、「公立中だけは絶対に行かせたくない」と考える保護者となると、世論としては「気持ちは分かる」派と「理解できない」派に別れるのではないだろうか。
「そもそも中学受験が過熱するほど私立中が存在する地域は首都圏と関西圏だけと言っても過言ではないでしょう。全国的には成績優秀な小学生でも『地元の公立小から地元の公立中へ進み、人生初めての高校入試で公立の進学・名門高に合格する』という進路が圧倒的多数です。札幌、仙台、新潟、広島、福岡といった地方の中枢都市になると中学受験組が一定数いますが、それでも大半は公立中を選ぶはずです」(同・フリーライター)
教育評論家の親野智可等さんは公立の小学校で23年間、教師を務めた。その経験を活かしたメールマガジン「親力で決まる子供の将来」は読者数が4万5000人を超える人気を誇り、『ずるい子育て』(ダイヤモンド社)、『反抗期まるごと解決BOOK』(日東書院本社)などベストセラーも多い。
親野さんは「一部の保護者の間で公立中学校に対する評価が急速に下落したのは、2006年からだと明言できます」と言う。
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