CMに川口春奈「ニデック」が工作機械メーカーを次々買収 中国から懸念の声
背景に経産省の指針
社名を浸透させるためなのか、ニデック(旧日本電産)は川口春奈を起用して「ニデックってなんなのさ?」とさかんに宣伝を打っている。だが、同社に対して心底「なんなのさ?」と思っているのは工作機械大手の牧野フライス製作所(以下牧野)に違いない。
【写真をみる】強引なキャラクターで有名 「ニデック」取締役会議長の永守重信氏
ニデックが牧野に対し“同意なき買収”を通知したのは、昨年12月27日のこと。買収額は総額2500億円超。ニデックはモーターのトップメーカーで、取締役会議長の永守重信氏(80)は名経営者として知られている。一方で、日産からスカウトした社長の首を短期間で切るなど、強引なキャラクターでも有名だ。なぜ牧野をターゲットに?
証券業界関係者が言う。
「工作機械が次の成長事業になると見込んでいるからです。ここ数年、ニデックは工作機械メーカーに買収攻勢を仕掛けています」
実際、M&Aのペースはすさまじい。2021年に三菱重工工作機械を傘下に収めると、矢継ぎ早に2社を買収、23年11月には中堅メーカーのTAKISAWAもTOBで手に入れる。
「その背景には経産省の姿勢が変わってきたこともあります。同省が23年8月に策定した『企業買収における行動指針』には、敵対的であっても、“企業価値が向上する買収”の場合、ターゲットになった企業も真摯に検討しなければいけないとしたのです」(同)
中国の金型業界が懸念
かくて、今回狙われたのが牧野というわけだが、ここにきて、意外なところから心配の声が出ている。取引先である中国の金型業界だ。実際、1月に入ると浙江省や重慶市の金型団体が相次いでニデックの買収意向に懸念を表明。いわく〈この買収がサプライチェーンの安定性と業界の発展に悪影響を及ぼす可能性があることを懸念しています〉(重慶市金型工業協会)。
そこで、ニデックに中国側の声を伝えると、
「当社といたしましてはそのような懸念は一切ないと考えております。(中略)本取引の発表後多くのお客様と取引先から、当社の中国拠点に対して、本取引を歓迎するコメントを多くいただいており、特に、新たに生み出すシナジーと価値創造に対してのご期待のお声を多数いただいております」(コーポレートコミュニケーション部)
しかし、永守氏の強引にも映る手法はメディアへ向けられることも。
「日経BP社の『日経Xテック』が1月16日に、ニデックによる過去の買収にシナジーが出ていないと報じると、“想像のみで根拠がない”と猛抗議。同メディアは翌日までに記事を取り下げてしまったのです」(前出の関係者)
周りの心配をよそに、TOBは4月から始まる。