【元阪神監督・吉田義男さん逝去】記憶に残る采配&パフォーマンス “神のお告げ退団”のグリーンウェルにも「ユーモラスな名セリフ」で湧かせた

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「水風呂に入って、シャワーで水を浴びて、頭を冷やしてもわからん。どこが暴言や」

 直後、井野修一塁塁審が「暴言がありましたので、吉田監督を退場処分とします」と場内放送すると、身に覚えのない吉田監督は「何が暴言ですか」と食ってかかり、試合は5分中断した。実際の退場理由は「執拗な抗議でプレーを続けられなかった」という日本のファンには理解しがたいもので、井野塁審もさぞかし説明に苦慮したことだろう。試合後の吉田監督は「水風呂に入って、シャワーで水を浴びて、頭を冷やしてもわからん。どこが暴言や」と、これまたユーモアたっぷりのコメントを残している。

 ディミュロ審判はその後、6月5日の中日対横浜でも判定トラブルをきっかけとする騒動の当事者となり、「身の危険を感じた」という理由からシーズン途中帰国したのは周知のとおりだ。

 一風変わった檄が、あっと驚く逆転サヨナラ劇を生んだのが、1998年7月7日の横浜戦である。

 0対1とリードされた阪神は9回裏2死一、二塁、矢野輝弘が“大魔神”佐々木主浩から中越えに逆転サヨナラ二塁打を放ち、開幕以来自責点ゼロの佐々木に初めて自責点と初黒星をつけた。矢野のヒーロー談話「これで野球に詳しくない人にも名前を覚えてもらいますね」も機知に富んでいたが、矢野が打席に入る前、吉田監督が耳打ちした言葉もユニークだった。

「あのな、とにかく同じ学校やからな。よう知っとるやろ。行けや」

 矢野は東北福祉大時代、佐々木の1年後輩で、バッテリーを組んだこともある。いかにも吉田監督らしい味のある“名言”だった。

 吉田さんのご冥福を心からお祈りいたします。

久保田龍雄(くぼた・たつお) 1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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