「イギリス人YOU」が80年前に祖父を救った日本軍人の墓参り 駆逐艦「雷」による知られざる「敵兵救助劇」とは

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 第二次世界大戦中の1942年、日本海軍は資源地帯であるオランダ領インドネシアの占領を目的とし、ジャワ島の攻略に向かっていた。それを妨がんとする連合国艦隊はアメリカ、イギリス、オランダ、オーストラリアからなる艦隊で迎え撃ち、両艦隊はスラバヤ沖で激しい戦闘を繰り広げることとなる。

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「YOUは何しに日本へ?」の放送で話題に

 日本側は高木武雄司令官率いる巡洋艦4隻と駆逐艦14隻。対する連合国艦隊いわゆる「米英蘭豪連合攻撃部隊」(ABDA艦隊)は巡洋艦5隻と駆逐艦10隻という布陣だった。1942年2月28日午後6時以降、7時間にも及ぶ「スラバヤ沖海戦」が生起した。これは日本側の勝利に終わり、連合国艦隊は巡洋艦2隻と駆逐艦5隻を失い、艦隊指揮官オランダ海軍カレル・ドールマン少将は戦死した。

 3月1日午前、残存連合国艦隊はインド洋への脱出を計る。英海軍巡洋艦「エクゼター」、同護衛駆逐艦「エンカウンター」等である。ところが日本海軍に発見され同日午後2時頃両艦は撃沈された。

 ……それから80年以上の歳月が経った2024年、イギリス人のデイビットさんが、埼玉県川口市にある、当時日本海軍の駆逐艦「雷(いかづち)」を指揮していた工藤俊作艦長の墓参りのため来日。その模様が昨年12月、「YOUは何しに日本へ?」(テレビ東京)で放送され話題となった。

 実は、このスラバヤ沖海戦では、敵潜水艦による雷撃の脅威に屈することなく、沈没した敵艦隊の乗組員多数を救助した日本海軍の英雄的行動があったことで知られる。

 デイビットさんの祖父もまた、イギリス海軍の駆逐艦「エンカウンター」に搭乗し、日本海軍に命を救われた将兵422名の一人だった(旗艦「エクゼター」乗員も含む)。

 工藤艦長の指示による救助活動がなければ、帰国した祖父が家族を持つこともなく、自分という存在もまたなかった――。

 デイビットさんを異国の墓参りに駆り立てたのは、そうした想いだったのだろう。

※以下は、その救助活動の一部始終を描いた『敵兵を救助せよ!』(惠隆之介著、草思社)の内容をもとに、一部を抜粋/編集してお伝えする。

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