新たな「大株主」出現でフジ問題は急展開 ちらつく「ホリエモン」の影 関係者の間で腹の探り合い
株が爆上がり
中居氏と女性のトラブルが明るみに出た昨年12月19日のFMHの株価は1858円。港氏の会見のころから急に上がり始め、1月28日には2000円を超えた。
「どこが買っているんだとみんな気にしていた」(フジ関係者)
レオス社だったのである。同社の株の大量保有が明らかになったのは2月7日で、その日の株価は2516円。同社は株保有のために総額256億円を投じたという。
今年に入ってからFMH株は50%以上も上昇した。問題の最中の「中居氏のトラブルで株価は下がる」「CMの引き揚げで株価は下がる」といった読みはことごとく外れた。
レオス社はSBIホールディングス(HD)の連結子会社だ。SBI-HDの会長兼社長は北尾吉孝(74)。ここからは話が込み入ってくる。北尾氏は2005年、ライブドアによるニッポン放送買収の際にはホワイトナイト(敵対的な株式公開買付けの防衛者)となった。
そのころはニッポン放送の事実上の子会社だったフジを北尾氏が買収から救った。一方、ライブドアを率いていたのは堀江貴文氏(52)だった。このとき敗れた堀江氏は日枝氏を憎み、北尾氏のことも不倶戴天の敵として恨んだとされている。
その後、北尾氏と堀江氏は和解する。2022年、堀江氏らが創業したロケット開発ベンチャーの「インターステラテクノロジズ」に対し、やはり北尾氏が会長と社長を務めるSBIインベストメントが10億円を出資した。
堀江氏は今回、FMH株を購入したと公言している。その株を持ってSBI-HD、レオス連合と連携するのか。2005年には対立した北尾氏と堀江氏が今度は手を組むのか。藤野氏は連携を否定しているものの、水面下の動きは分からない。関係者の間で腹の探り合いになっている。
一方、こちらは分かりやすい。米国投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」は日枝久氏の辞任を要求。取締役の過半数を独立社外取締役(証券取引所が定める独立性基準を満たす取締役)とすることも求めている。
ほかにも大株主はいる。東宝(保有株式割合7.93%)、文化放送(同3.33%)、NTTドコモ(同3.29%)などだ。日枝体制が揺るぎないものだった昨年までと違い、各社が6月の株主総会でどんな動きを見せるのかは未知数だ。唯一確かなのは各社とも株の価値を毀損できない。
これもはっきりしている。3月末までには出る第3者委員会の報告で、中居氏と女性のトラブルに関して責任があると認定された取締役は責任を免れないということ。株主たちが許さないだろう。なにしろフジの2025年3月期の広告収入は従来計画を233億円も下回るのだ。大損である。
再建への難関は「人権」
経営再建に向け、日枝氏ら高齢の支配者に退いてもらうのは比較的容易に違いない。株主総会で株主の過半数が賛成すれば、いつでも解任が可能だからである(会社法339条1項)。
「日枝氏は自分の解任が決定的になった時点で、株主総会を待たずに辞めるだろう。みっともないことを嫌う人だし、自分の存在によって株主総会を紛糾されることも避けるはず」(フジ関係者)
難しいのは人権軽視と指摘される社内風土の一掃だ。人権重視への路線転換が認められないと、CMのすべては戻って来ないだろう。
荒療治が必要ではないか。フジのズレた人権感覚は以前から指摘されていた。
昨年1月に開かれたフジの第533回番組審議会(委員長は元検事総長の但木敬一氏)でのことである。テーマは「テレビと人権」。フジの選任した番組審議委員から、こんな発言が出た。
「人権はもちろん大切だが、人権をうたえばうたうほど、テレビだけが宙に浮いてしまって堅苦しい箱になってしまう」「人権意識が強くなりすぎると良い表現ができなくなり、テレビ局の挑戦も締め付けられ、番組がつまらなくなり、世の中から見捨てられてしまうのではないか」
21世紀は「人権の世紀」とも言われている。にもかかわらず、信じられない発言である。欧米の人気ドラマ、バラエティーは人権を尊重していても面白い。
番組審議会は放送法の定めによって各局に設置されている組織。お飾りではない。逆によく知られているBPO(放送倫理・番組向上機構)は法的根拠がない。こんな認識の委員たちに番組を審議されていいのだろうか。
この番組審議会には港氏、大多氏も出席していた。
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