新たな「大株主」出現でフジ問題は急展開 ちらつく「ホリエモン」の影 関係者の間で腹の探り合い

エンタメ

  • ブックマーク

おじいさん経営者

 資産運用会社「レオス・キャピタルワークス(レオス社)」が、フジテレビの親会社「フジ・メディア・ホールディングス(FMH)」の株を大量保有(5.12%)し、大株主に加わった。これにより、フジ問題は新たな局面を迎えた。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

 ***

 レオス社の藤野英人社長(58)はブルームバーグ社の取材に対し、FMHの問題点について「のんびりしたおじいさん経営者たちが支配していることや、人権無視みたいなところも含めたカルチャー」(2月10日)と指摘した。

 厳しい意見だが、的外れとは言えない。FMHとフジの取締役相談役・日枝久氏は87歳、日枝氏の懐刀である尾上規喜・FMH取締役(常勤監査等委員)兼フジ監査役は89歳。社外取締役にも後期高齢者が目立つ。

 人権無視との声も否定できない。一昨年6月、「だれかtoなかい」のMCだった中居正広氏(52)が女性とトラブルになった。編成部長の関与があったのかが焦点となっている。

 当時の編成担当専務・大多亮氏(66)=現関西テレビ社長=はトラブルを知ったものの、情報をコンプライアンス部門と共有しなかった。コンプライアンス部門が何のためにあるのか分からない。

 港浩一前社長(72)はトラブルから約2カ月後に事実を知った。やっぱりコンプライアンス部門には知らせなかった。視聴率が比較的良かったこともあってなのか、「だれかtoなかい」の放送もそのまま続行した。

 スポンサーが次々とCMを引き揚げたのは、不評だった港氏の1度目の記者会見があった1月17日の直後から。人権無視に問題を感じたからにほかならない。

 早々とCMを引き揚げた日本生命は「あらゆる事業活動において人権尊重を基本とした経営に取り組んでいます」と社内外に声明している。

 やはり早期に降板した花王も「企業活動全体において、すべての人が生まれながらにして持つ基本的権利である人権を尊重する責任を果たします」と宣言している。

 トヨタなども人権重視を前面に押し出している。今、日本を代表する企業はいずれもそうなのだ。

 フジは昨年7月、「めざましどようび」(土曜日午前6時)の公式YouTube「めざましmedia」で新人アナの上垣皓太朗氏(24)を先輩アナたちがからかい、視聴者から批判が殺到した。フジはスポンサーの考え方に追いついていない。

 もっとも、藤野氏は高齢者による支配や人権無視が解消されたら、フジを取り巻く状況がまるで違って来ると考えている。「日本の中で一番開かれた、かつDXなどに対して前向きな会社に変貌する千載一遇のチャンス」(ブルームバーグ、2月10日)

 レオス社がFMH株を保有した目的は投資。株主の権利は行使するものの、経営に参加することは考えていないという。同社はひふみ投信を主力とする資産運用会社で、昨年9月時点での運用残高は1兆3000億円以上に達している。

 テレビ局の親会社の株を保有するのは初めてではなく、昨年10月までにテレビ東京ホールディングス株5.31%を所有した。藤野氏はコンテンツ産業の株は割安と踏んでいるようだ。一方でほかの大株主と組んでテレビ局再編の旗振り役になる可能性もある。大株主が当初の方針を大きく変更することは珍しくない。

 レオス社がFMHの株を買い進め始めたのは1月20日から。顰蹙を買った港氏の1度目の会見から3日後だ。その日の株価は1785.5円だった。

次ページ:株が爆上がり

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。